トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「幸村!」
「幸村くん!」
「精市!」
「部長!」
一斉に声があがり、それはぐるりとベッドを囲んだ。
「無責任に聞こえるかもしれねえっスけど、部長ならぜってー復活出来ますって!」
「ったりめーだろぃ! 幸村くん以外の誰が俺たちをまとめて、誰がトップに立つっていうんだよ!」
「そうです。私たちには幸村くんが必要なんです! あなたがっ……必要……なん、です……!」
柳生くんが言葉を詰まらせると、あわてて眼鏡を外しハンカチを出す間もなく袖口を目に押し当てた。
それが呼び水となり、嗚咽とむせび泣きが病室内に満ちた。
「……まず、謝らせてくれるかい」
それぞれ袖口に顔をうずめるメンバーをゆっくりと見渡した幸村くんは、静かに口を開いた。
「謝る……?」
鼻をすすらせながら丸井くんが最初に顔を上げる。
「俺、皆にずっと……八つ当たりしてた……」
しばらくの沈黙の後、ぽつりと幸村くんが話し始めた。
「手術の話も、本当はもっと前に言われていたんだ。でも……」
いったん区切られた言葉に全員が顔を上げ、真剣に耳を傾けている。
「……この病院で入院中に仲良くなった人がいて、その人が俺が受けるのと同じ手術を先にして……亡くなっ……て……」
幸村くんが唇を噛み、ギュッと目を瞑ると、肩を震わせ両手の拳を強く握り込んだ。
皆もただ息を飲む。
「それで、怖くなったんだ。急に死が目前に迫ってきて、どうしようもなく怖くて、怖くて、手術を延期してもらっていたんだ」
今度は力なく開いた手のひらに、やはり虚脱した瞳があてもなくさすらう。
「そんなの、怖くて当たり前だ。……俺だって、そんなの聞いたら怖い」
「俺もだ、精市」
桑原くんの一言で小さな声が口々に湧く。
私も怖かった。
「幸村くん、手を出して。風のリボンをあげる」
「え……」
私がポケットから折りたたんで結んだ、細いリボンを幸村くんの手のひらに落とすと、わずかに怪訝そうな眼差しを向けられた。