トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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『幸村……です』
幸村くんの細いけれどよく通る声が私にも届いた。
「幸村、て呼びかけるのも変な感じがするけど、みんなからもう聞いただろ? 俺、再発してもう十ヶ月近く入院しているんだ」
『……ああ……』
「それで、今度再手術をすることになった」
息を飲む音がいくつも重なった。
おそらく今初めて知らされたことなんだろう。誰もが焦ったような顔をしている。
「前回の手術ではうまくいかなかったから、別な方法でするって言われた」
『そう、なんだ……』
向こう側の幸村くんのトーンが下がっていく。無理もない。
「勘違いするなよ、幸村」
『……え』
「この世界では再発してしまったかもしれないけど、お前の世界でもそうなるとは限らない。俺とお前は同じようでいて違う幸村なんだから」
『あ……』
「そう。でも、だからといって何の保証もないし、どこかの眼鏡の言うように油断せずにいこう、だね」
幸村くんがふっと静かに微笑んだ。
その場の空気が瞬時に和むのがわかる。
多分もうずっと長いこと幸村くんは、お見舞いに来るみんなの前で笑わずにいたんだろう。
微笑む幸村くんに、メンバー達の誰もが笑いたいけれど泣きたい、その相反する感情が混じりどの顔もくしゃくしゃになっている。
「ありがとう」
自分の会話が終わったのか、幸村くんは私に携帯を戻した。
「二年前の自分……か」
幸村くんはつぶやくと、膝の上に広げた両手のひらをじっと見つめた。
「俺、もう一度テニス、出来るかな……」