トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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鞄からハンカチを取り出して涙を押さえると、しばらく乗っていた幸村くんの手がそっと離れた。
「でも皆バカだよね」
「え?」
「私が復学してまた生徒会選挙になったんだけど、三年から会長候補が一人も立たなかったんだ」
「え、でも」
「うん、通例では三年が生徒会長で、一、二年から副会長と書記が数名だよね。でも、三年の子たちが私が生徒会長になるのを待ってた、て……」
また涙が勝手にこぼれた。
「そ、か。一ノ瀬さんて信頼されているんだね。学年全員からなんて、そうそうないよ?」
幸村くんが微笑んだ。
ずっと射抜くような険しい瞳で見られていたけれど、それが和らいだ。
「なら、今の生徒会長は一ノ瀬さんなんだね」
「うん、そう」
「その分だと、進級してもまた生徒会長かな」
「多分」
二人の目が合って笑った。
でも、幸村くんの空虚感はまったく消えていない。
それは私では到底埋めることはできないものだと思う。
「お待たせっス」
幸村くんとの会話が一通り終わってから、切原くんたちも戻った。
「あと話していないのは精市だけなのだが……」
ためらうような柳くんの言葉は弱々しい。
「……」
幸村くんはじっと柳くんの手にある携帯を見つめる。
繋がったままなら、向こうの幸村くんも何か思うところがあるかもしれない。
もし自分も二年後に再発したら……。
あのリハビリは一体なんだったのかと打ちのめされるはずだ。
幸村くんが長い沈黙の後、考えるように重い口を開けた。
「……話すなら、キミの友達と話したいな」
病室内が静かにざわついた。
「え、千晶と?」
「そう」
いつの間にかこちらを見ている幸村くんと視線が合った。
「いい?」
「あ、ああ。聞いて、みよう」
送話口の先、はるかな電波の彼方で中三の幸村くんが待っているのだろう。柳くんはひどく申し訳なさそうな声で伝える。
「でも皆バカだよね」
「え?」
「私が復学してまた生徒会選挙になったんだけど、三年から会長候補が一人も立たなかったんだ」
「え、でも」
「うん、通例では三年が生徒会長で、一、二年から副会長と書記が数名だよね。でも、三年の子たちが私が生徒会長になるのを待ってた、て……」
また涙が勝手にこぼれた。
「そ、か。一ノ瀬さんて信頼されているんだね。学年全員からなんて、そうそうないよ?」
幸村くんが微笑んだ。
ずっと射抜くような険しい瞳で見られていたけれど、それが和らいだ。
「なら、今の生徒会長は一ノ瀬さんなんだね」
「うん、そう」
「その分だと、進級してもまた生徒会長かな」
「多分」
二人の目が合って笑った。
でも、幸村くんの空虚感はまったく消えていない。
それは私では到底埋めることはできないものだと思う。
「お待たせっス」
幸村くんとの会話が一通り終わってから、切原くんたちも戻った。
「あと話していないのは精市だけなのだが……」
ためらうような柳くんの言葉は弱々しい。
「……」
幸村くんはじっと柳くんの手にある携帯を見つめる。
繋がったままなら、向こうの幸村くんも何か思うところがあるかもしれない。
もし自分も二年後に再発したら……。
あのリハビリは一体なんだったのかと打ちのめされるはずだ。
幸村くんが長い沈黙の後、考えるように重い口を開けた。
「……話すなら、キミの友達と話したいな」
病室内が静かにざわついた。
「え、千晶と?」
「そう」
いつの間にかこちらを見ている幸村くんと視線が合った。
「いい?」
「あ、ああ。聞いて、みよう」
送話口の先、はるかな電波の彼方で中三の幸村くんが待っているのだろう。柳くんはひどく申し訳なさそうな声で伝える。