トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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ゴツい手だ。
ずっとテニスをしていた証しが丸ごと詰まっている、そんな手だ。
「再発したのは高二に入って間もない頃、生徒会選挙が終わってすぐだったな」
「生徒会?」
幸村くんが自分の手のひらから顔を上げてこっちを見た。
「うん。私一年で書記やってて、流れで副会長に当選したんだけど、結局何もできなかったんだよね」
ちょっと肩の力を抜いて天井を見る。
「やっぱり倒れる数日前から指先が痺れる感覚があって、まさか、て思った。もう病気なんて嫌だって思った。でも……再発、した」
自然に唇を噛むと、幸村くんも悔しそうな顔をしてくれていた。
「入院したら皆お見舞いに来てくれるんだけど、頑張ってだの、早く退院してだの、平気で言うんだよね。治療キツいし辛いし、これ以上何をどう頑張れって言うのさ、って本気で思った」
今は気楽に話せるけど、これは相手が幸村くんだからだ。
彼以外には話してもわかってはもらえない。
「幸村くんも思わない? 頑張れって言う奴ら、同じ病気になって同じ治療して、それでも頑張れって言えるなら言いに来いって」
「……ああ、そうだね」
「身体が動かなくなるって、歩けないだけじゃなくて、息をするのもおぼつかないし、呂律も回らなくて上手く話せなくなって、家族ですら私が何を話しているかちゃんと聞き取って貰えなくて、あれは本当に悲しかったな」
「ああ」
「でも、一人だけ私の言葉を聞き取ってくれた友達がいるんだ」
「……もしかして、さっき携帯で泣きだした子?」
「うん、その子。千晶っていうんだけど、中学から一緒で、同じ高校へ進学して、同じクラスで笑い合っていたのに……私が入院していた間に先輩に、なっちゃった……」
「一ノ瀬さん」
大きくて暖かい手が頭に乗った。
知らぬ間に涙がこぼれていた。