トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「まず私が何者か、だよね?」
椅子に座り直し、改めて幸村くんと対峙してから聞いた。
幸村くんは警戒色を強めた表情で無言でうなずくだけだ。
「普通の高校二年生。ただ、ダブってるけど」
「ダブる……?」
「うん、留年したの。今は二回目の二年生」
「え……」
なんで、と唇だけが動いたから続けた。
「さっき言ったよね? 三月に退院したって。あれ本当。まあ、ここの病院ではないけど、病気も入院も本当」
「……留年するほどの……?」
「うん」
幸村くんにまとわりついていた、警戒色が少し薄くなった。
「病名、聞いても……?」
遠慮がちな視線がさまよいながらこちらに届く。
私は目を閉じ、ゆっくり息を吸い込んだ。
「ギラン・バレー症候群」
幸村くんの身体が一瞬にしてこわばり、目が大きく見開かれた。
「最初の発症は中二の時。突然動けなくなって、いや、思い返せば予兆はあったかな。身体が痺れる感覚があったんだけど、特に気にはしなかった。それがいけなかったのかもしれないけど、病気の予兆なんてわかるわけないし」
倒れた時に聞こえた千晶の悲鳴。
動けないもどかしさ。
それが次々と頭をかすめていく。
「その時はリハビリ込みで半年くらいかかったかな。でも、完璧には戻らなかったな。ほんのわずかだけど左手の小指に麻痺が残った」
膝に置いていた自分の手を開いた。
「……麻痺があるなんて、見えないよ」
「うん、自分にしかわからない。何かの時に動きが追いつかないだけ。例えばパソコンのタイピングを急いだり、ピアノを弾いたり。そんな時。他の人にはわからない」
「そう、なんだ」
「うん」
何かを考えるように、うつむいた幸村くんも自分の手を開きじっと見た。