トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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自信満々に突き出された画面には、頬袋をパンパンに膨らませたリスのような丸井くんが、左右それぞれの手に鷲掴みにしたケーキを更に頬袋に突っ込もうと奮闘している瞬間が映し出されていた。
「ぷっ、何これ。丸井?」
「そっス! 部活親睦会であった、早大食い大会のケーキ部門での決勝戦の時のっス」
楽しげに話す切原くんと対照的に、それまで笑っていた幸村くんの表情がすっと冷めた。
「そう」
その冷めた視線が私に向く。
「で、その携帯と君について説明してくれる?」
「……了解。そうだな、簡単に言えば私は」
「赤也、どうした。携帯は見つからないのか?」
幸村くんの冷徹さに負けじと口を開けたとたん、これだ。
どことなく遠慮がちなノックがしたと思ったら、そっと開いたドア越しに柳くんが見えた。
そしてその後ろに赤と銀もチラリと動いた。
てっきり切原くん以外のメンバーは帰ったものだとばかり思っていたけど、切原くんが幸村くんの病室に戻る間、どうやら彼らは下で待機していたらしい。
「……まだ、いたの?」
幸村くんの不機嫌さに拍車がかかる。
皆を見る目が厳しい。
「あ、いや、すまない精市。赤也が遅いのでつい戻ってしまった」
うろたえるように柳くんが頭を下げる。
この雰囲気の悪さは一体……。
あの次元の立海メンバーたちが記憶の中で笑い合う。
その中心は幸村くんだ。
「早く帰ってくれないか」
冷めきった声が部屋に広がる。
それを耳にするメンバーの表情が、見る間に悲しみに打ちひしがれていく。
こちらもそんな彼らは見るに耐えない。
幸村くんの気持ちはなんとなくわかる気がする。
同じ思いを私もしたから。
「それ、じゃあ……精市、また……」
「もう来なくていいよ」
柳くんの瞳が見開かれ凍った。