トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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私はその携帯の存在を今の今まで完全に忘れていた。
切原くんが幸村くんのベッドの下へ潜り込んで自分の携帯を拾い上げたのと、私が鞄から別次元の切原くんの携帯を取り出したのはほとんど一緒だった。
二人が携帯を手にしたのを確かめた幸村くんは、ゆっくりと呼び出しを切った。
画面に『不在着信 幸村部長』と残った。
「どういう事か説明してくれるかな」
つい先ほど少しだけほぐれたと思った幸村くんの眼差しが、より一層険しくなった。
まあ、無理もない。
「その携帯……まさか俺のって、はずないっスよね……」
自分の携帯が手にあるのに、不安げに何度もこちらの携帯と見比べる切原くん。
私も切原くんの手元の携帯を見る。
こちらの切原くんのは、奇跡的にまだ機種変をしていない。
つまり、今私の手にあるものとまったくの同機種だ。
「君のって言ったらどうする? 切原くん」
「え、いやだって俺のはここに……て、え?」
そう、私は紹介も名乗りもされないうちに切原くんと呼んだ。
「これ、君のだよ。同じでしょ? 機種も幸村くん用の着メロも」
そして画面を二人に向けた。
「待ち受けも」
緊迫感が流れていた病室に、突然笑いが起こった。
「な、に。赤也の待ち受けって、仁王、の変顔、なわけ?」
苦しそうにお腹を抱え、ベッドの上で身をよじる幸村くん。
「ちっ違いますよ! あの待ち受けは中学ん時ので、今はこれっス!」