トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「落ち着きましたか?」
部室に入り、椅子に座らされた千晶が柳生から渡された飲み物と冷やされたおしぼりで一息ついたのは、しばらく経ってからのことだった。
「ありがと、取り乱してごめん……」
「構わんぜよ。それより一体何がどうなったんか、詳しく教えんしゃい」
空のカップとおしぼりを手にしたまま、ぼんやりと虚空を見る千晶に仁王もはやる心を抑える。
「実は……」
千晶がポツリポツリと言葉をつなぐ。
行方不明者を捜す旅路に出た二人だが、移動中の暗闇で、浩美が何かに引き込まれるように、突然その姿をかき消した。
しかし、設定時間内は勝手に帰る事も出来ない。千晶は半狂乱で着いた先を駆けずり回った。
もしかしたら、はぐれはしたが浩美も無事に着いているかもしれないと思ったからだ。
「でも、どこにもいなくて、元の世界に戻っても、やっぱり帰ってなくて……」
再びの嗚咽が言葉をとぎらせる。
部室が静まり返っているせいか、外の練習音がやけによく聞こえる。
「だから、私はもう一度ここに来たの。切原が持つ浩美の携帯! あれなら、次元を超えて浩美に届く!」
「あ! わかったっス!」
切原に視線を合わせた千晶の目に、力強さが灯った。
それを見た部員達も、いつの間にか感じていた不安感も和らいだ。
「……えっ……?」
「赤也、どうした?」
「消えてるっス……」
「え?」
鞄から取り出した浩美の携帯の電源を入れた切原は、画面を見つめたまま固まった。
「待ち受けからイーグルが消えてるんスよっ!」
携帯をメンバーに向けた切原が叫び、
「なんだって?」
「んなまさかっ!」
一斉に画面を覗き込んだ。
ただ暁の空が広がる。
そして、見慣れたシルエットを欠いた暁も、やがて暗闇に溶け込むように消えた。
「え、え?」
「どうなってんだよ? バグか?」
切原の手から丸井が携帯を引ったくると、電源を入れ直し、更にフォルダも確認した。
「うっそ……フォルダにもねえ……」
呆然とつぶやく丸井に、他のメンバーも言葉が出ない。
「と、とにかく浩美に連絡をしなきゃ」
千晶の焦りに、丸井はハッとし、あわててメモリにある電話番号を呼び出した。
画像はどうあれ、連絡が取れればそれでいい。
待ち受け用なら改めて送って貰えば済むことだ、とその時誰もが思った。