トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「通じた! 一ノ瀬さんっスか?」
『うん、私! 凄い、通話も可能なんだ』
二人で驚き、不思議さと感動を分かち合った。
「俺、思ったんスけど、もしかしてメールも通話も、全部この待ち受けのイーグルが運んでくれてるんじゃないかって気がしてならないんス」
『ええ?』
「呼び出し音の後のすげー雑音の中で、聞こえたんスよ。あれ、戦闘機の爆音スよ!」
浩美の携帯の待ち受け画像のF-15イーグル。
暁の空を駆け上がる天空の王者。
『そっか、なんだろう。凄く嬉しい。イーグルが運んでくれるんだ』
「そっス! 今度、一ノ瀬さんからもかけてみて下さい。イーグルのやつ、ぜってー張り切りますって!」
『うん、ありがとう。かけてみる、明日で大丈夫かな?』
「平気っス! 待ってます!」
どちらともなく笑い合う。
『ところで切原くん、あの着信音なに?』
「え?」
『いや、切原くんからの電話だって感動する間もなく、もだえるくらい笑わされたんだけど』
「え、俺そんな変なのにしてたっスか?」
『してた、してた』
待ち受けといい着信音といい、男子中学生ってこれが普通なのかな、と浩美は思った。
『主人公、俺だから』
あの越前くんに見てと言われたから、千晶にコミックスやDVDを借り、三ヶ月がかりで見倒した。
「本当に主人公だ。しかも」
ラスボスは跡部くんじゃなかった。
ごめん、勝手に妄想した。
考えれば、跡部くんと幸村くんはステルス戦闘機だな、て思う。
ステルスは相手からは見えない。
相手が例え高性能レーダーを搭載してても、見えない。
言わば視覚や聴覚を奪われたまま攻撃を受けてしまうわけだ。そのスタイルは、幸村くんにそのまま当てはまる。
対して跡部くんのインサイト。
相手の弱点を見抜き、自分は見させないのだからそれもステルスだと思う。
「そういえば……」
ふと思い出して自分の指先を見る。
指と指を合わせて思い切り滑らせ……たけど、音にならない。
「何であんな気持ちいい音出せるんだろう」
跡部くんに指パッチン講座開いて貰いたかったな。
自分の指先からあの音は生まれない。
でも、あの世界からたくさんの贈り物を貰った。
「携帯もそうだし」
お互いのフォルダに残る写真は送り合って無事全部見られたし、新たな写真も送ってくれるから楽しみだ。
それに立海以外に氷帝と青学まで、写真やメールを送ってくれる。そして、
「この帽子」
越前くんが私の頭の上に投げた帽子は、そのまま一緒に時空を超えた。
「宝物、だね」
そっと切原くんの携帯に帽子をかぶせた。
「あ、着信音変えるべきかな。でも、切原くんチョイスのだし、切原くんの携帯だから、出かける時だけマナーモードでいいね」
そう思いながら、新しい携帯の待ち受け画面を見る。
置いてきた携帯と同じ待ち受けにしている。
天空の王者。
いつかまた、どこかで会えるといいね。
fin.