トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「何やってんだよ、ブン太」
「立海まんじゅうタワーの撮影」
「はあ?」
昼休み、購買から買い込んだ立海まんじゅうを部室のテーブルに積み上げた丸井が、屈み込んだり立ち上がったりして色々な角度から浩美の携帯で撮影している。
「あの時さ、俺達は二人に立海まんじゅうを渡すことも、見せてやることも出来なかっただろぃ?」
「ああ、そうだな……」
「だからよ、せめて画像だけでも送ってやろうと思ってさ」
丸井は少しだけ寂しげな表情を浮かべ、手のひらの携帯に視線を落とした。
それを見るジャッカルもまた、静かにうなずくだけだった。
「なんだと? 携帯が通じる?」
跡部に浩美の携帯の存在が伝わったのは、それからしばらくしてからのことだった。
それは日吉と鳳からもたらされた。
「ええ。スポーツショップで偶然立海の切原と会いまして、話で出たんですよ」
「フン、立海で独り占めにはさせねえぜ」
早速行動を起こした跡部は、氷帝にも定期的に浩美の携帯を貸し出させる約束を取りつけた。
ルールはひとつ。
決して浩美のプライバシーは覗かない。
浩美が所持していた当時のメールは見てはいけないという暗黙の了解が立海で生まれ、それは氷帝でも当然と受け継がれた。
新たに浩美の携帯は学校別のフォルダが作られ、それぞれその中で連絡をとる取り決めだ。
「メールが送れんなら、電話だって出来んじゃね?」
ある夜、風呂上がりに浩美にメールを送ろうと携帯を手にした切原は、当たり前なようでいて当たり前でないことを、ふと思った。
「物は試し……だよな」
しばらくためらった切原は、かつての自分の携帯宛てに番号を押した。
「まさか今の携帯にかかるってことはねえよな?」
新型のスマホを隣に置いてじっと見る。
メールアドレスだってあの壊れた携帯と同じなのに、浩美の携帯からは、この新型にメールは届かない。
呼び出し音が鳴り始めた。
それを耳にしたとたん、わけもなく鼓動が早くなる。
「っ……!」
急に降りしきる雨のようなノイズに変わったと思ったら、それを蹴散らすように、一瞬ごうっと大きな音が走り抜けた。
そして、不安になるような静寂が広がり
『き、切原くん?』
懐かしい声が届いた。