トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「アンタ、何笑ってんの?」
跡部くんを、ラスボスどころか悪の組織の序盤戦中ボスクラスの扱いにして脳内妄想していた私に、越前くんが不審そうに見て来る。
「ちょっとね、主人公とラスボスについて考えていたんだ」
「フーン、それ何かのゲーム?」
「ゲーム? うーん……」
千晶によれば、ここのテニスの元は少年漫画で、アニメ、ゲーム、映画、舞台、それに付随したCDやグッズ、とあらゆる媒体を通じてメディアに出ていたらしい。
「ゲームでもある物語の世界、かな」
「フーン、面白いの?」
「わからないな、千晶はハマってるけど、私はプロローグすら知らない」
「へえ、それならさ」
越前くんは自分がかぶっていた帽子を取ると、手首にスナップを利かせてフッと上に飛ばした。
「え」
帽子は緩やかなカーブからそのまま私の頭に乗った。
「今からプロローグ、始まるよ」
「え」
「主人公、俺だから」
小気味よいほど生意気そうに笑う越前くんを、窓辺からのまぶしい光が包む。
「覚えといて」
「越前くん……」
「第二ステージに話が進むから、見て」
「わかった、見る」
「OK、じゃね」
そう言うと、越前くんはテラスの窓を押し開き庭へ出た。
風はいつの間にか夕暮れの匂いを運んでいる。
この世界も夕焼けは同じなんだ。
「わーっ! 乾、何でこんな時に乾汁なんて作るんだよ!」
「ふふ、青学名物と言えばこれしかないよ」
「いや、確かにそうだけど何かが違う!」
大石くんの焦る声に、何事だろうとテラスから室内を振り返った。
その時ちょうど、室内から私を見つけた幸村くんの顔が嬉しそうにほころんだ。
「あ、一ノ瀬さん! これ我が立海の……」