トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「あれで天衣無縫の極みとか言い出したら驚きぜよ」
先ほどより幾分肩の力を抜いた仁王が言えば、
「それはさすがにないだろうが、奥が深い人だ」
「確かにね、捕らえ所がない」
柳と幸村も浩美を視線から外さずにそう言った。
「丸井くーん、デザート来ないとなくなるCーっ!」
そんな中、両腕を突き上げ大きく振る芥川の声が響いた。
「そうじゃん! いっけね、何落ち着いてんだ俺! 今行くって!」
丸井も勢いよく立ち上がり、回転寿司屋のように自分の前に積んだ皿を抱えると、一気に駆け出した。
「あわただしいな、丸井は」
「デザート絡みだからね」
真田は眉をひそめ、幸村は小さく笑った。
「もう明日の夕方には帰還だね」
部屋にあるバスルームから出た千晶は、タオルで髪を押さえながらドライヤーのスイッチを入れた。
「そうだね。明日はどうするの? またテニス?」
「う~ん。テニスだからテニスを見ててもいいんだけど」
と、歯切れが悪い。
「キャラと出かける?」
「会いたいだけで来たせいか、会ってテニス見たら満足しちゃったみたい」
「あらら」
時空を超えてまで来た割に、意外にあっさりしていたんだな、と思わされた。
でも、これなら帰りたくないとか、誰かをお持ち帰りしたいとかで騒ぐこともないだろう。
「ところで私達って、明日のいつ頃戻るわけ?」
「さあ。二泊三日としか言われてないから詳しくはわからないけど、明日中なのは確かよ。23時59分まで?」
何とも曖昧である。
まあ、万が一戻り損ねても跡部くんが何とかしてくれるようだし。そこは海外旅行並みに保険をかけて貰ったようなものだ。
他力本願なのはこの際しょうがない。
そうだ、考えてみれば跡部くんにはお世話になりっぱなしじゃないか。宿に食事に。
今更ながらにどうしよう。
宿代なんて受け取るとも思えないし、こちらからあげられるような物なんてないし……
『俺様の美技に酔いな』
ふと跡部くんの言葉を思い出した。
そうだ、明日は酔わせて貰おう。
技には賞賛で返そう。
「結局ほとんど話せないままだけど、僕としては戦闘機より花の好きな女の子のほうがいいかな。手塚はどう?」
青学の不二と手塚の部屋だ。今日は乾はいない。
「俺は……そうだな、会話がなくとも気にならない相手ならばいいと思う。だから、相手の趣味は問わない」
「ふふ、手塚的な答えかな。彼女なら多分物凄い読書量だと思う。何を尋ねてもすぐ跳ね返って来そうだ」
好みとは違うと言う割には興味はあるらしい。
「足はなかなか綺麗やったな」
「ああ? 何の話だ」
ここは跡部本来の個人の部屋で、忍足は向日と相部屋だ。
「あの二人や」
「よく見てやがるな」
「そこは趣味やし」
「言い切るんじゃねえ。気持ち悪がられて終わりだ」
跡部が顔をしかめた。当然だろう。
「三日間しかいてへん相手に言わへんがな。時間が来たら、もう生涯会われへんのやし、たくさん楽しんでくれたらそれでええやん」
「そうだな」
「ほな、おやすみ」
軽く手を振った忍足は、すぐにドアを開け出て行った。
「一期一会か……」
ベッドに寝ころんだ跡部はそうつぶやいた。