トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「ゼロ戦て、実は防御力がゼロなんだよね」
「え、初期装備もなしっスか?」
「マジかよ」
「うん、紙の装備って言われるくらい。機体の装甲はわずか2ミリ。撃たれたらピンチ」
楽しいはずのランチが立海メンバーだけ、しんとしてしまった。
「そんな装備で、戦ったのかよ」
丸井くんがうなだれる。お国のためと言われ散っていった英霊達が偲ばれる。
「ゼロ戦は防御力を捨てて、極限まで機動力を高めたんだ。でも、防御力はゼロだけど、攻撃力と機動力は開戦当初は間違いなく世界のトップクラスだった」
空いたお皿をテーブルに乗せ、私は続けた。
「余分をすべて切り捨て空対空の戦闘能力に絞ったイーグルと、防御力を捨てて機動性を極限まで高めたゼロ戦。ただひとつを目指すことは同じだと思う」
もっとも、ゼロ戦はもう戦況的に再開発したくても出来ない状況に追い込まれてたけれど。
「ゼロ戦の能力は凄まじいけど、操縦するパイロットの腕でその力は左右されてしまう。だから人と機体が一体になった時、最高の能力が発揮されるんだと思う。言ってみれば無我の境地かもね」
「え?」
「え?」
「え?」
「うん?」
あちこちから驚く声があがって、なんだか固まった人もいるみたいだし、むしろこちらが驚く。
「それにイーグルは王者だけど、ゼロ戦はサムライだと思う」
「サムライ?」
「うん、銃撃戦の中、一振りの刀で戦いを挑む究極のサムライ」
「浩美、デザートあるよー。跡部が追加で気前よくおかわりを出してくれた!」
「ホント? 行く行く」
テーブルの皿を掴むと一目散にデザートを目指して駆け出した浩美に、立海メンバーは呆然としたようにその後ろ姿を目で追った。
「……彼女、俺達のこと知らないんだよね?」
「ああ、近江さんのほうは詳しいようだが、一ノ瀬さんのほうの知識は皆無のようだ」
「なんか俺、部長と越前のこと言ってるのかと思ったっス」
遠くでデザートを吟味している二人の姿に、青学メンバーが声をかけている。
「俺も、ボウヤとのこと言われたのかと思った」
幸村の視界に、そのボウヤこと越前リョーマも入って浩美からケーキを分けられていた。