トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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跡部邸に着いて思った。
ヨーロッパの宮殿だ。お金持ちっていうのは本当なんだ。
こんな凄いお城をタダで見学出来るなんて得した気分。さっきの高揚感がそのまま続いていく。
「よう、幸村」
「あ、お邪魔するよ、跡部」
「気にするな。部屋に案内させる」
そう言うなり、跡部という人は指を鳴らした。
いい音出すな、とつい指先に注目してしまう。昔から何度試してみても私の指からあの音は出てくれない。
ちょっと羨ましい。
いつの間にか部屋は、この跡部って人と私の二人になっていた。しかも何だか笑っているみたいだし。
誰もいないので、ついキョロキョロとした私に
「連中なら客室に案内した。お前も友達と一緒でいいんだろ?」
「もちろんです、ありがとう」
そう言われあわててお辞儀をした。
「なんなのあれは~」
通された部屋のベッドには、額に氷嚢を乗せうなるようにつぶやき横たわる千晶がいた。
「ああ、F-35A戦闘機に乗って来たんでしょ?」
「浩美!」
跳ね起きた千晶の額から、剥がれるように氷嚢が床に落ちた。
「せ、戦闘機? 何よそれ~」
「何って、航空自衛隊の次期戦闘機だけど? いいものに乗れたじゃない」
「どこがっ! 荷物扱いで狭いスペースにこれでもかってくらいぎゅうぎゅうに押し込められて、凄い速さと旋回でもう目が回ったわよ! あ~思い出しただけで気持ち悪い~!」
再びベッドに倒れ込んだ千晶に、落ちた氷嚢を拾って額に乗せた。
「そう言えば、F-35Aって単座だっけ? ほんとよく乗れたね」
「だから荷物扱いだって」
大きく息を吐く千晶に、小柄でよかったね、と内心思った。
まあ、ただの民間人が訓練もなしにいきなり戦闘機に乗ったんだし、気持ち悪いで済んだだけマシと言うものだ。
「詳しいな、お前」
「本当だ、女子高生で戦闘機に詳しいなんて珍しい」
振り返ると跡部って人と、柳くん、それに四角いフレーム眼鏡の人が並んでいる。
「そうかな? ただの時事ニュース程度の知識だけど」
「それでもそれを記憶し、会話として活かせるのだから並ではない」
柳くんの目がさらに細まったように見えた。
「浩美は我が校が誇る才媛で生徒会長なんだから当然よ」
氷嚢の下から覇気のない声が出てきた。
「ほう」
「生徒会長ならもう一人いるな。呼んで来よう、面白い」
そう言うと四角いフレーム眼鏡は廊下に出て行った。
「手塚もいるんだ」
片手で氷嚢をずらした千晶は、部屋に目を走らせ人物を確認するとそう言った。
「ああ、そうだ。なるほど、お前は俺様達を承知済みというわけだな」
「ええ、そうよ」
もっとはしゃぐかと思いきや、千晶は妙に静かだ。
それだけ戦闘機のお迎えで受けたダメージが大きかったのだろう。
まあ、荷物にされたようだし。しかも小型の。
HPの回復には時間がかかりそうだ。
「もう、どうせお迎えよこすなら、もっとソフトにして欲しかったわ」
弱々しい千晶に
「ハッ、何を言ってやがる。連絡の取れねえ相手が先に離陸した航空機に乗ってるんだぜ? それを追い抜いて先回りするにはより速い物を出すしかねえだろ?」
爽やかに言ってのけた。
「あ~そっかあ、言われればそうよね。なんだかありがとう、跡部」
千晶も納得したようだけど、搭乗便と到着予定の空港に連絡して、千晶を待機させておくのが一番一般的な考えだと思うんだけどな。
そう思って跡部くんを見たら、愉快そうな目で千晶を見ていた。
なるほど、これが愉快な俺様の由来なんだな。