トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「だから、記念に交換しない?」
「え、あ……」
自分から言い出したのに、若干焦っている感じの切原くん。
「私のも、もう本体データは見られない。これは中学入学で買って貰った物だから、いい加減寿命なんだと思う」
「そうだな、携帯は使用期間が一年半から二年という割に非常に高価な消耗品だ。だから一ノ瀬さんは大事に使い込んだと言える」
柳くんの言葉に少し嬉しくなる。
「それにね、私の携帯も先月三日間くらい行方不明になってたんだ」
「へえ。何だか携帯同士が行き来していたみたいだね」
「そうだったら面白れーな」
「そうだな」
みんながそう言う中
「うわー、それ聞いたら絶対交換しなきゃいけねーって気になってきたっス!」
張り切った切原くんが、思い切り頭を下げた。
「こいつのこと、よろしくお願いしまっス!」
「うん、私のもね」
慣れ親しんだ携帯が手を離れ、少しごつい携帯が空っぽの手のひらを埋めた。
「先輩方~またお客さん達が押し寄せたでヤンス~」
さっきの男の子が半ベソな状態で部室のドアを開けた。
「客って異次元からの?」
「そうでヤンス~」
「幸村様ーっ!」
「ブンちゃんいないのー?」
「レギュラーどこよ?」
ドアの向こうの嬌声が部室になだれ込んだ。凄いな、どれだけの平行世界で異次元移動が成功しているんだろう。
「ブンちゃんブンちゃんブンちゃーん!」
「うわあ……ああも連呼されっと、俺が文鳥みてーだろぃ! 恥ずいっての!」
耳をふさいで丸井くんが顔をしかめたけれど、それはみんなの笑いを誘っただけだった。
文鳥って、可愛いだけだし。
「俺達は異次元ツアー中でしばらく帰らないって言っといて」
「わかったでヤンス~」
身を翻した男の子は観光客という名の集団に説明しに戻って行った。健気だな。
「あ、はい、わかりました。すぐ参ります。わざわざのお気遣いありがとうございます」
男の子がドアを閉めてすぐ、幸村くんの携帯にどこからか連絡が入った。
「跡部からの迎えの人が裏門に車をつけてくれたって。みんな行くよ」
「ああ、表側はあの喧騒のようですから気を利かせてくれたのですね」
肩にバッグを担ぎながら、みんながぞろぞろと幸村くんに続く。
「ほら、一ノ瀬さんも」
笑顔で振り返った幸村くんに呼ばれた。私もこの仲間に入れて貰えたような気分になり、ちょっと高揚してしまう。