トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「え、赤也、何言ってんだ。お前壊れた物を人にやるのかよ」
「そうですね。ちょっといただけない行為ですよ、切原くん」
「あ、いやいや、それは重々承知なんスけど」
わらわらと私と切原くんの周りにみんなが集まってきた。
「これ……」
差し出された物は、使い込まれてあちこち傷だらけになった少し古い携帯電話だ。
「初めて買って貰ってすっげー気に入って、友達なんかはどんどん機種変して新しいのにしてもずっと使ってたんスけど、もうついに限界みたいで充電もできなくなっちまって」
つぶやくように手元の携帯を見つめる切原くんの瞳は限りなく優しい。
「それ、先月赤也がないないって探しまくってたやつじゃね?」
じっとその携帯を見ていた丸井くんが思い出したように言う。
「そっスよ。急に見あたらなくなって、必死に探したってのに、三日くらいしたら部屋の机の上にあったんスよね」
へえ、と思った。
なぜなら私の携帯も……
「充電出来ねえから、もう本体のデータは何も見らんねえんスけど、俺にとっちゃ立海に入ってからの思い出がギッシリ詰まってるんス」
「修理には出さなかったのか?」
「あ、出したんスけど、もう基盤ごと丸々取り替えねえとダメだって言われて、そうなると移してないデータは全部消えちまうんで、あきらめて取りやめたんス」
柳くんの問いに切原くんは、ため息と一緒に答えた。
「どっちにしてもデータはもう見らんねーから同じなんスけど、基盤変えたらこいつは別なこいつになっちまう」
「なんとなくわかるよ。愛着がある物は、そう簡単に割り切れないよね」
幸村くんの後輩を見る双眸もまた優しい。
「そうなんスよ。だから俺、大事にしてくれそうな人に預けておきたいって、何だか急に思ったんスよ!」
「唐突じゃのう」
「いや、ほんと急にパッと閃いたんスから! 俺だって普通に考えて初めて会った人に壊れた携帯あげるっておかしいって思うっス!」
力説しながら弁明する切原くんは、一生懸命で可愛さがあふれる。こんな後輩ならうちの学校にも欲しいと思う。
「切原くん」
みんなに笑われて必死になっている切原くんに、私もポケットから携帯を取り出した。
「同じなんだ」
「え?」
「私の携帯も同じ症状で壊れて、今日ここに来ていなければショップに行く予定だったんだ」
切原くんはちょっと驚いたように、私と差し出した携帯を何度も見比べた。
「切原くんの話しを聞いたら、多分私のも基盤ごと交換のケースだと思う」
「ほう、凄い偶然やのう」
今度は仁王くんが、私、切原くん、そして二人の携帯を順繰りに見ていった。