トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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「仕方ない。奥の手を使ってあげるよ」
やおら幸村くんが携帯を取り出した。
誰に連絡するのだろうと、幸村くんの手元に注目した。
「あ、跡部かい? そう幸村。今回の観光兼合宿は実に有意義だったよ、ありがとう。ああ、それでね……」
淡々と進む幸村くんと跡部という人との話に、目が点になった。
「それが一番妥当な選択ですね」
「そうじゃな。跡部なら問題ないぜよ」
「あるんだ、跡部さん家ってそんなものが」
「大富豪の財閥だと言ったろう? そちらの世界に財閥はないのか?」
「戦後解体された。残っているのは財閥系という名前だけ」
「なるほど。面白い。いっそ我が家に招待して、そちらとこちらの世界の歴史の違いを語り合うのもいいかもしれないな」
「あー、柳先輩ずるいっス! その人なら俺も話したいっス!」
「それなら俺も混ぜろよな! 好きな菓子がそっちにもあるのか、すっげー知りてえんだ」
口々にそれぞれの希望が飛び交う。
「うるさいよ、お前達」
実に静かに幸村くんが微笑むと、瞬時に部室がしんとした。
凄いな幸村くんて、と感心した。
あの微笑み方、後で教えて貰おう。私も一発で周りを静かにさせてみたいし。
「ああ、それでね。これからそっちへお邪魔させて貰って構わないかな? そう、俺達レギュラー全員と異世界のお客様の九人。どうせもう一人のお客様もそっちへ行くだろ? まあ、そういうことでよろしく頼むよ、ありがとう」
電話が終わると、幸村くんはもう一度微笑んだ。
「そういうわけだから、みんな各自準備して。跡部の家に泊めて貰うよ。自宅の連絡もちゃんとね」
「イエッサー!」
「つっても合宿の帰りだし、泊まる準備なんていらねえな」
「そうですが、家には連絡をしませんと」
「そうじゃの」
と、それぞれ携帯を取り出し家族との会話をし始めた。
「あ、そうだ。え……と一ノ瀬さん、でしたよね?」
切原くんが確かめるように、私の目を覗き込む。
「うん、一ノ瀬です」
「よかった。へへ、これ、壊れてるんスけど、よかったら次元を超えた記念に貰ってくれませんか?」