帝王の庭*
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あたしの走れる限界は、わずか50メートル…。
それを越えて走れば…また動けなくなってしまう…。
「俺はどちらでも構わないよ?」
日吉さんが余裕の表情で言った。
この賭けなら負けるはずがない…そう踏んだのだろう…。自然と悔しさが滲(にじ)んできた。
「…少し考えさせて下さい。あたしだって、あまりに不利な戦いは、挑戦する気ありませんから」
あたしは日吉さんに、そっぽを向くようにして答えた。
「ふふ…別にいいよ。この賭けだと俺は、ただ待ってればいいだけだからね」
それだけ言うと、また日吉さんは競技に出るのか戻って行った。
「はぁ……」
高さ5メートル…?未だかつて誰も取ったことのない『帝王の星』ですって…?
(冗談じゃないわよ。何でそんなものに他校生のあたしが出るわけ…?無茶苦茶すぎ…)
「はぁ…」
もう一度深くため息を吐いて、日吉さんに断ろう…と思った時…
『まだまだだね』
…リョーマくんの声が聴こえたような気がした。
「───!」
…こんなことで負けていられない。人が考えたものなら、必ず見破れる盲点があるはず…。
あたしは立ち上がり
「ウス」
また引き戻された。
「もぉ、樺地さん!あたしに考えさせてよ~」
「何を考えるんだ?」
跡部さんも再びやって来た。
「樺地、お前の種目だろ?」
「ウス」
樺地さんと入れ替わって、跡部さんがあたしの隣に座った。
「忍足に頼まれてるんでね。『あんたを帰すな』って」
「………」
あたしはまた、ため息をつくと
「障害物競争…って、どういうコースなんですか?」
取り敢えず、打開策を出したくて跡部さんに聞いてみることにした。
「障害物?…そうだな、400メートルを縦割りにして、半分をハードルなどの走り中心、もう半分は跳び箱や平均台、マットといった競技が中心だ」
「──!」
少し閃(ひらめ)いた。
「じゃ…あの星を取る係りは…?…」
あたしは星を指差した。
「星の話を聞いたのか?」
跡部さんはふふっと笑って言った。
「各グループの最終ランナー…すなわちアンカーだ」
あたしは星を見つめた。
風を受けてくるくる回ると日差しを反射させ、キラキラ光る…。
「飛び入り参加でもする気か?」
背もたれに寄りかかり、腕組みをした跡部さんはあたしを一瞥(いちべつ)すると言った。
「─ええ、男子テニス部のアンカーで」
あたしは星を見つめたまま言った─