トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「どちら様ですか? 学校見学……にしては、中学生ではないですよね? もし高等部でしたら隣接した裏側の校舎がそれです」
不意にかけられた声に、脱力してうなだれていた私は首だけ持ち上げた。
「あ、部長。お帰りなさいでヤンス~」
さっきの男の子が小走りで駆け寄ったのは、部活のユニフォームとおぼしきジャージ姿の一行だった。
「この人は異次元観光でいらしたお客さんでヤンス~」
「へえ」
「ほう、観光客が来ちょるんなら、俺らも次元を超えちょる有名人なんかの?」
「マジかよ」
「すげーな、おい」
「ふむ。それは非常に興味深い。もし時間があるなら話を聞かせて貰えるだろうか?」
「あ、いいね、それ。俺も混ぜて、蓮二」
「ええと……」
矢継ぎ早に言葉を告がれ、しかも中学生男子に取り囲まれる図は焦る。
それにお帰りなさいってことは、千晶が会いたがっていたのって、この子達じゃないの?
心の中で『千晶、ドンマイ』と思った。
「ああ、失礼しました。俺は部長の幸村と申します」
「副部長の真田です」
柳、柳生、仁王、桑原、丸井、切原、と次々と名乗りをあげる。
「一ノ瀬です。高校二年です」
部室に案内され、そこで千晶とこの世界に来たことを説明した。
「でも、こちらの世界のほうが移動手段は確立されているようですね」
「というと?」
柳と名乗った男子に、自分が実験体であること、戻れる確率は五割だということも伝えた。
「あ、でもよ。もしそっちがダメな場合でも、こっちからお前の世界に送り届けるのは可能じゃないのか?」
確率五割に一瞬静まった室内が、褐色の肌の持ち主、桑原くんの言葉で明るくなった。
「あ、そうか。こちらなら任意の世界に送れる……」
抱えていた不安が一気に霧散した。
「よかったね」
「ありがとう」
「でも、俺らが言ってそんな簡単に管理局って動くもんなんスか?」
「あ~そりゃあれだよ、跡部に頼めば一発だろぃ?」
「そうだな。今回の異次元観光には跡部財閥が相当後押しして出資しているし、事実上のスポンサーだ」
「跡部財閥……」
さっきも聞いたな。千晶の第二候補の学校の子だっけ。
千晶は今頃どの辺りだろうかと、ふと思った。
「ああ、跡部財閥はこの世界では名の知れた富豪でね、息子は俺達と同じ中三で愉快な俺様だよ」
「部長、異世界の人にその説明は……」
「いいんだよ。せっかく来てくれたんだし、土産話くらい持たせてあげなきゃ。ね? 蓮二、真田もそう思うだろ?」
「そうだな」
「うむ。土産の心配りとは。さすが幸村だな」
うむうむとうなずく子は、どこかずれた感覚だけど、素直で可愛いなと思った。
「珍しいっスね」
「え?」
「副部長見て驚かない人って」
確か切原くんと名乗った子が、目を丸くして私に言った。
「赤也、貴様は何を言うつもりなんだ?」
真田くんの眉間に見る間に皺が寄っていく。
「いやだって、初対面の人ってもれなく顧問と間違えるし」
「ああ、この子が老け顔ってこと?」
「ぶはっ」
「ブン太、笑うんじゃねえよ」
「正直じゃのう」
「たっ……」
「た?」
何か言いかけて真田くんは口を閉じた。
「フフ、さすがの真田も異世界からのお客様には怒鳴らないみたいだね」