トリップシリーズもので、いつものヒロインは全く登場しません。高校生ヒロインの冒険譚です。
パラレル・どっと・混む〜Episode1〜*
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『パラレル・どっと・混む』
「ねえねえ浩美! 今日の午後と土日暇よね?」
天気だけはやたらいい、代わり映えのない週末の朝。いつものように登校中の通学路で、妙にテンションの高い友人、近江千晶から声をかけられた。
「今のところはね?」
今日は先生方の都合で授業は午前中だけだ。そのせいで課題やら宿題やらが出なければ、平穏無事な休日を過ごせる……と思った時、携帯の調子が悪かったんだっけ、と気づいた。
「ならさ、ちょっとつき合ってくれるかな?」
「買い物?」
それならついでにショップで修理に出せばいいか。
「いやいや、聞いて驚く『二泊三日トリップ体験ツアー』よ! モニターで当たったの!」
「は?」
何じゃそりゃ?
「二泊三日で、過去、現在、未来、二次元、四次元、どこでも行ってみたい世界に飛ばしてくれるんだって!」
「は?」
「実用化は出来たんだけど、商業ベースに乗せるにはまだまだ試験運転が必要だから、データが欲しいんだって!」
「は?」
浮かれまくる千晶から何とか得た情報によれば、SFの領域だとばかり思っていたパラレルワールド。
それがどうやら時空を超える装置の開発が成功して、いよいよ人体実験への段階にまで来たらしい。
薬でいえば治験だ。
マウスやチンパンジーは、どの次元、時代に送ってもちゃんと無事に戻ってきたようだ。
ただ、よくよく聞けばマウスで八割、チンパンジーで七割の帰還率らしい。
なので、いよいよ人間を……という段階で研究者も尻込みをする。体が大きくなるにつれ下がる割合。当然だ。
例えマウスやチンパンジーで成功したとしても、戻れる保証はどこにもないのだ。
それをこの千晶は……
「ふふふ、コネっていいわね。まさかお父さんの学生時代のお友達が天才的科学者だったなんて、冴えてるわ」
ちょっとオタクでレイヤーで、二次元と動画好きのアンテナにそんな美味しい情報が引っかからないはずがない。
そして、次元を超えるなんて開発機構の存在も、そうたやすく一般人に漏れるはずもない。
これは……
そのお父さんのお友達の天才的科学者とやらが、実験体として千晶を上手く釣り上げたとしか思えない。千晶はかなり小柄なのだ。
「もちろん浩美も行くよね?」
満面の笑みで言う千晶は
「だってこれ、二名一組だもん!」
実に嬉しそうだ。
ため息と共に胃が重くなった気がした。
可能性として、二人無事に戻れる。二人共戻れない。一人だけ戻る。この三択になるが、一人だけの場合、私か千晶かの四択目がある。
はしゃぐ千晶は行くことばかりに想いを馳せ、巻き込まれた上に千晶よりも大柄な私は戻れることをひたすら念じた。
戻って携帯を修理に出さなきゃならないし。