俺様からの贈り物*
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「…あっ跡部さん! あたしダンスなんて踊れませんからね!」
さっき言われたことをやっと思い出したのか、いきなり焦ったように七星が跡部をもう一度見上げた。
「何言ってやがる。もう踊ってるじゃねぇか」
「は…?」
言われてハタと気づいてみれば、ホールの景色は音楽に合わせてくるくると回る。
跡部に手を取られてから自覚のないままワルツを踊っていたらしい。
「え…え?」
音楽に乗りながらただ目が点になる七星。
「ダンスなんてもんはな、リーダーが踊れりゃ例えパートナーがかかしだろうが、デッキブラシだろうが関係ねぇ。何だって踊らせるぜ」
得意気に跡部が笑う。
だが、自分はかかしと変わらない位置にいるのかと思うと何だか悔しい。
「何だ、怒ってるのか?」
見透かすように目が微笑んだ。
「そりゃ…」
確かに一見ダンスをしてるようには見える。それに、自分が不満を持ちさえしなければ、生のオーケストラでワルツを踊るのはかなり気持ちがいい。こんな体験は、まず出来ない。
それに、跡部のリードは大きく力強く確かで華やかだ。油断したら最後、知らずにぐいぐいと惹かれていってしまいそうだ。
「気にするな。審査員がいるわけじゃねぇし、俺とお前の二人が楽しけりゃそれでいいんだ」
違う曲に変わってもゆったり軽やかなリードが続く。
(楽しいかな…あたし…)
自問自答してみる。跡部から見たら、自分はかかしと変わらない…。
そう思うとなぜか急に気が楽になり力も抜ける。
「そうですね、楽しいです」
笑顔で七星が言うや否や、振り回されるくらいに大きなターンでホールのコーナーを回る。跡部から借りたドレスが風を含んでふわっと広がる。
元々七星は身体を動かすことが好きだから、それが初めてのダンスでも徐々に楽しさが増していく。
「ふぅ…」
立て続けに四曲踊ったらさすがに疲れたのか、七星の息が上がった。
「休むか? 誰か飲み物を」
跡部のひと声でホールに控えていたメイドが、いち早くお盆にいくつかのグラスを持って来た。
「そら」
「ありがとうございます」
跡部から渡された琥珀色の液体に満たされたグラスを受け取ると、そっと口をつけた。
(烏龍茶だ…)
動いて少し汗ばんだ身体に冷たい烏龍茶が心地いい。