俺様からの贈り物*
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ヘリが去り、その夜の主を乗せた船はゆっくりと動き始めた。それほど風が吹いているわけではなかったが、船が海上を移動し始めたとたん、冬の海風がデッキに立つ七星の髪をなびかせる。
「そら、いつまで見てる。冷えるから行くぜ」
跡部はもう一度七星に声をかけた。
「あ、ごめんなさい」
ヘリの消えた上空をずっと見ていた七星は、我にかえったようにあわてて跡部の元へと駆け寄った。
当たり前だけれど暗闇の中から潮の香りがする。船が切り分けて進む波の音も。
暗いデッキから明るい船内に入ると、物珍しげに階段や廊下の作りを見回しながら歩く。跡部家の客船だけあって、船内も豪華ホテル並に重厚な作りになっている。
「客船は初めてか?」
そんな七星の姿に跡部も楽しげな表情を浮かべる。
「はい。何だかわくわくします」
素直に明るい笑顔が返った。
「ここだ」
跡部が押し広げた扉の中は、広々としたホールだ。
「わぁ…」
中央には天井まで届きそうな大きなクリスマスツリーが、幾百ものイルミネーションでまたたくように輝いている。
「凄い…さっきのホールのよりずっと立派ですね…」
七星は驚きのまま目を見開いて、そのツリーを見上げた。
「当たり前だ。こちらが本番会場だからな」
つぶやくように跡部が口の端で笑った。
「え…?」
「何でもねぇ。踊らねぇか?」
跡部は七星が羽織っていた毛皮のコートをメイドに預けると、七星の手を取った。
「えっ…」
それが合図だったのか音楽が流れ始めた。覚えのあるウィンナワルツだ。
(嘘…オーケストラ?)
ツリーの陰から跡部に引かれるように出た七星の目に、今自分の耳に届く音楽を紡ぎ出している楽器と、その奏者達の姿が映った。
「室内管弦楽団だ」
驚く七星に、いとも簡単に跡部は告げる。
「…もしかして跡部家専属だったりします…?」
探るように七星は跡部をチラリと見上げる。
「まぁな。パーティーだのレセプションだの、絶えず何かしらのイベントがあるから必要なんだ」
(へえぇ…)
感心したように七星は楽団員の奏でる音に耳を傾けながら、弦を押さえる指先と弓を動かす腕のなめらかな動きに見とれていた。