俺様からの贈り物*
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七星から素早く雪だるまを取ると、跡部はテーブルにある銀のお盆にそっと置いた。雪だるまの首に巻かれたベルベットリボンのチョーカーも水気を含みしっとりと濡れてしまっている。
ゲームが始まる前まで七星の首に飾られていた物だ。
「…こんな小さな雪だるまならすぐ作れたろ…?」
柳が部屋から立ち去ってから30分以上は過ぎている。ちょっと庭先で雪だるまを作って戻るなら10分もあれば余裕だ。
七星のすっかり冷えて冷たくなってしまった手を跡部は両手で包み込むようにぎゅっと握りしめた。
「こんなに冷たくなりやがって…」
自分の手の中で冷たさを放つ七星の小さめの手を、じっと見つめながらつぶやくように言った。
「それは…あの、雪だるまの目に千両か万両の実をつけようと思って、庭を探してみたんですけど暗さと雪で見つからなくて…あの、手を離してくれませんか?」
手を握られ恥ずかしさで焦りながら説明する七星の髪や服をよく見れば、細かい水滴がいくつもつき、溶けた雪で濡れていることに初めて気がついた。
「バーカ、この俺様が冷えきったお前が暖まるまで離すと思うか?」
そう言うと跡部は、暖かな火がパチパチとはぜる暖炉の前に七星を引っ張るように連れて行く。
(…暖かい…)
だが、ほっとするような揺らめく火の暖かさとは裏腹に、七星の背中に緊張が走る。暖炉の前に七星を立たせた跡部は背後に回るとそのまま七星の小柄な身体を抱きしめたのだ。
心臓が一度にドキドキと激しく動き出した。頬もサッと紅潮したのがわかる。
「あ、あの…跡部さん?暖炉の前にいるだけですぐに暖まりますから…その、あ…ありがとうございます。も、もう大丈夫ですからっ…」
身体をすくませるようにしながら背後に全神経を集中し、しどろもどろに七星は跡部に告げる。
「まだ、髪も服も濡れてるし身体も冷たいぜ。青学の連中がいる手前、お前に風邪をひかせるわけにいかねぇだろ」
平然と抱きしめる手に力を込めながら跡部は言う。
目の前の柔らかな髪にはまだいくつも小さな水滴がつき、その髪に近づけた自分の頬にもわずかな冷気を感じる。
チラリ、と七星を抱きしめたまま銀のお盆に乗せた雪だるまに視線をやると、雪だるまの下に少しずつ水たまりが出来て広がっているのが見えた。