俺様からの贈り物*
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(いけない、すっかり遅くなっちゃった。早く戻らないと…)
長い廊下に敷き詰められた分厚い絨毯は、急ぎ足で歩く七星の足音を一歩ごとに吸い込み柔らかく包み込んでしまう。
通り過ぎるいくつかの扉の中からは笑い声や音楽が聴こえる。クリスマスパーティーが盛り上がっているんだと思う気持ちと、跡部を待たせているんだという焦る気持ちが入り交じる。
「ごめなさい!」
「…あ…?」
ノックもせずにいきなり開かれた扉に、いきなり謝る七星。フェイントもいいところだ。
「これを…っ」
冷静を装い、何の用だ…と言おうとした跡部の前に七星は両手を揃えて差し出した。
「え…」
差し出された七星の手のひらには、小さな雪だるまが乗っていた。
「あの…柳さん達に教えて貰ったんです。鍵は跡部さんが持っているって。でも、本当ならそれはあたしが見つけなきゃいけなかったことなのに、何もしないまま答えを教えて貰ったのが納得出来なくて…」
雪だるまをその手のひらに乗せたまま、七星は視線を足元の絨毯へと落とした。
そんなことで悩んでいたのか、と跡部は思ったが負けず嫌いな七星の性格を考えると微笑ましくもなり、先ほどまでのイライラもいつの間にか消え去り、フッと穏やかな眼差しが灯る。
「…その雪だるまは何だ」
落ち着いてくれば自然と浮かぶ疑問を跡部はそのまま口にした。さっきから差し出されたままだが自分にどうしろというのか、それがわからずにいた。
「あ、これは…」
勢いで出したものの、七星にも気恥ずかしいのか目線が泳ぐ。
「跡部さんに…クリスマスプレゼントの代わり…です。それであのっ、これと鍵を交換してくれませんか?」
今度は顔を上げ、まっすぐに跡部を見てそう言った。
「………」
元より、七星が来ればすぐに鍵を渡すつもりでいた。何かと交換しようだなんて考えは何もなかった。
「……っ!」
七星を驚きの眼差しで見つめていた跡部だが、七星の手のひらの雪だるまから水滴がしたたり始めたのに気づくとあわてて手首を掴んで引き寄せた。
「バッカ…野郎! 手がこんなに冷てぇじゃねぇか!」
雪だるまは部屋の暖かさで、入って来た時より幾分柔らかく小さくなった気がした。