横浜物語
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「話とは……?」
人混みからやや離れた位置にあるベンチに座ると、まず真田が切り出した。
「幸村さんのことです」
「精市の……」
流れていく人の動きを見つめている七星の横顔を、真田の視線がチラリと捉えた。
「考えたら、あたしは何も幸村さんのことを知らないんです」
ゆっくりとまばたきをすると、七星はつぶやくように言った。
七星とは、立海のメンバーを含めまったくの偶然の出会いで知り合っている。
それに、明らかな好意を持って近づいてくる立海の女子生徒達と違って、七星は一定ラインを越えてくることもない。
節度ある好ましい人物、と真田は受け止めている。
だから、七星には幸村のことを話しても大丈夫だろう。それに、いずれ幸村本人からも自分のことは話すだろう。そう、真田は己の中で結論を出した。
「精市は、昨年……二年の冬に発病して倒れた。徐々に筋力を奪われ、自力で歩くことすら困難になった」
真田が口を開くと、七星の瞳も大きく開いた。
「病状に関して、俺はあれこれ言うつもりはない。お前も入院の経験があるなら、人に言われるよりは自分で言うほうがいいだろう」
「そう……ですね」
真田へ向けていた視線を自分の手のひらに落とすと、七星は小さく言った。
「だが、お前がただの好奇心で精市の話を聞きたいわけではないと俺は思っている」
再び、七星の視線は真田に向けられた。