月光小夜曲*
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
跡部さんの指先からドビュッシーの『月の光』が流れ始めた。
照明を落とした部屋の中に、曲に合わせたように月の光が差し込んで跡部さんを柔らかく照らし出す。
月の光のステージで、お客はたった一人の演奏会…。
優しい曲、ほの暗い部屋…ふかふかのソファにクッション…心地好い眠気…。
あたしは不覚にも、いつの間にか寝入ってしまっていた…。
演奏が終わった跡部は驚いた。
ソファで七星が、実に気持ちよさそうに眠り込んでいるのだ。
「…ったく…困ったな」
と口にしたものの、別に困った風でもなく、かえって愉快そうな笑みを浮かべると、眠り込む七星の横に座り、冷めた紅茶を飲み干した。
カップを置くと、跡部はソファの背もたれに片肘をつき、足を組むと七星をじっと見つめた。
「無防備すぎるぜ、お嬢ちゃん」
そっと手を伸ばすと、七星の髪に触れ、頬を撫でた。
しかし、まったく起きる気配はなかった。
「…事故か」
跡部は、七星の話を思い返した。
「だが…もしお前が事故に遭わなければ、スプリンターとしての道を歩み、俺と出会うこともなかったな…これも運命の不思議か…」
ふ…と微笑うと、内線電話を取り
「高寺家に連絡してくれ。後、客間の準備もな」
と、指示を出した。