月光小夜曲*
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「えーと…跡部さん」
ちょっとだけ振り向いて、あたしは跡部さんに訊いた。
「何だ」
「もしかして、あたしを呼び出した用件て─」
「そうだ。お前に月を見せたかったから、呼んだ」
跡部さんは、相変わらず偉そうに言う。
(見たから帰ります…ってのはありかな…)
あたしは跡部さんの囲いから、どうやって出たらいいものか思案した。
「景吾様、お茶がはいりました」
その時、うまい具合にメイドさんが声をかけてくれたので、あたしの緊張はほどけた。
サロンに戻ると、デパートでしか見たことがないようなティーセットに、香りのいい紅茶から湯気が立ち上っていた。
(多分、マイセンとかよくわからない高級なカップなんだろな)
あたしはまた緊張して、味わうどころじゃない。
でも─
「あの、跡部さん、あたしお話があります」
あたしは思いきって切り出した。
月の位置は、最初に見た時から、かなり動いていた…。
「─そう…か。それは…無理をさせたな…」
あたしの話を聞き終えた跡部さんは、少し驚いたような顔をすると、つぶやくように言った。
「いえ…ですので、もしまた氷帝に呼ばれるなら、普通に呼んで頂けると助かります」
あたしは精一杯の愛想笑いを浮かべた。
そして、じゃ、これで…とソファから立ち上がるあたしに
「まぁ、もう少しつき合え。お前に曲を聴かせよう」
そう言うと跡部さんはピアノに近寄り、優雅な動作で蓋を開けた。