帝王の庭*
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急にまた、日吉さんに声をかけられ、あわてる。どうもも何も全然見てなかった…やばいかも。
「よ…よかったです」
当たり障りな~く、穏便にお愛想笑いで言ったけど、内心ドキドキ。
(気を抜かないようにしなくちゃ…)
無意識に呼吸を整える。
そんなあたしをチラ…と横目で見ると日吉さんは、校庭の中央を指差した。
「あれを見て。真ん中の万国旗が集まってる辺りから、星の飾りが下がっているのが見えるだろ?」
「え…?あ、はい、あります」
あたしは言われるまま日吉さんが指差す方向へ視線を移した。グラウンドの上に校舎と木にくくりつけられた幾本もの細いロープから万国旗が下がり、風にはためいている。
そのグラウンドの中央辺りで、ロープが交差しているところは万国旗もなく、ひとつの星の飾りだけが下がっている。
「それが…?」
「あれが『帝王の星』。障害物競争のハイライトだ」
ちょっと、微笑んで日吉さんは言った。
「え…?」
(星をどうするんだろう…?)
「あの星は5メートルの高さに設置されていて、それをジャンプして取るんだ」
「ジャンプ…?5メートルを…?無理でしょ?」
あたしは思わず立ち上がり、また樺地さんに引き戻された。
「そう、だから器具や道具は使用禁止。肩車や組体操の類もだめ。取る時は自分一人、自分の手だけで取るのが鉄則なんだ」
「それじゃ…体育祭の種目にならないんじゃありませんか?」
あたしはやや呆れながら、つけ加えて日吉さんに聞いた。
「取れた人は、いるんですか?」
「いや、氷帝創立以来、ただの一人も触れたことのない星だ。だからこそ『帝王の星』と言われるわけだ」
意味ありげに微笑むと、日吉さんは、あたしをゆっくりと見た。
「…まさか…」
チラ…とあたしも肩をすくめるようにして、日吉さんを探った。
「察しがいいね。その通り。俺と賭けをしよう。あの星を七星さんが取れれば、俺は君をあきらめる。しかし、もし取れなければ…」
日吉さんが手を伸ばして、あたしの頬に触れた…。
ゾワッ…とした。
「君は俺のもの」
じっ…と真剣な目であたしを見つめる。
あたしはその眼差しを振り払うようにあわてて言った。
「で…でもあたしは氷帝の生徒ではないし、競技に出られるわけが…」
「障害物は、クラス対抗と部対抗があるんだ。女テニに紛れちゃえばわからないよ」
くす…と笑う。
「そんな…だって…このトラックって…何メートルあるの…」
あたしは広い氷帝のトラックを見て、不安が募り始めた。
「一周400メートル。一人半周ずつのリレーだ」
「え…」
半周なら200メートルになる…!
あたしには…走れない…。