東京物語*
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あっさり言うと、スタスタと音楽室から出ていってしまった。
「どうやら私たちは振られたようだね」
表情には出さないが、七星の消えたドアを見つめる榊はいささか残念そうに見える。
「そのようですね」
乾も笑いをこらえるような微苦笑で応じた。
氷帝へは不本意ながらも幾度か来たこともあり、迷うことなく校舎を出て脇目も振らずに正門へと向かった。
「帰らはるんですか?」
「え?」
背中越しの声に振り向けば
「まだテニスやってるんで、観てったらどうですか?」
先ほどの他校の男子生徒だった。
脳裏で思い出したのは謙也のスピードだ。
「……」
観たい、が、コートへ行っては駄目だ。見つかるとかなり面倒なのはわかっている。
伏し目がちにため息を漏らすと七星は首を振った。
「残念ですが、帰りますので」
失礼しますと、男子生徒に緩めに会釈をしてまた背中を向けた。
「訳あり、って解釈させてもろてもええっちゅう事ですか?」
「え、と」
戸惑いながら足を止めた七星に
「俺、財前言います。大阪の四天宝寺いう学校から、ここに遊びがてら練習試合に来とります」
それはつまり……?
「こっそり観ればええだけやと思います」
(こっそり……)
この最前線の敵地でこっそりが通用するものだろうか?
七星が相当真面目に難しい顔をしたのだろう。財前はそれが気になった。
「こっそりも厳しいん?」