東京物語*
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「ええ、まあ……なんというか……」
「けど、テニスは好きなんやろ?」
食い入るように謙也のプレイを観ていた七星。
「テニス……」
改めて考えると、自分は特にテニスが好き、というわけではないのだと思う。
コート中を豪快な速度で駆け回る謙也が羨ましいのだ。
「あのスピードが凄いな、いいなって思ったんです」
コートのある方向に視線を向けながら七星は呟くように言った。
「ふうん」
スピードスターの異名で売る謙也のファンは多い。が、大概は謙也の顔目当てで、プレイヤーとして、テニスの技や試合内容で応援しているとは思えない。と、常々財前は思っている。
「あんたさん、謙也さんの顔覚えてはる?」
「え? 顔、ですか? 謙也さんて、さっきプレイしていた人ですよね……?」
財前の問いに眉を寄せ、口許に手を添えながら真剣に思い出そうとする七星に財前は吹き出しそうになった。
「わかりましたわ。ほんまにプレイだけ観とったんやね」
コートから走る足音が聞こえてきた。
「財前、まーたこっち来とるん? さっきの猫でもおるんかーい」
姿を見せた謙也はあっという間に二人に近より、七星は逃げそびれた。
「女の子……? 財前、他校でナンパってやるやん」
七星と財前を見比べ、にやつく謙也に
「ちゃいます」
と、謙也の顔を掴むと強制的に横に向かせた。
「何すんの財前、首が取れたらどないするん」
「取れませんて。この人、忍足謙也言うて……」
「忍足!?」