東京物語*
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「あ、謙也さん」
「失礼したね。それじゃあ、俺たちはおいとましよう」
財前が謙也を呼びきる前に、乾は七星の腕を素早く取ると大股で表玄関へと向かった。
「ん? 財前どないした? 誰かいたん?」
「あー……いや、猫がおったんで見てたとこっすわ」
「猫?」
キョロキョロと辺りを見回す謙也に、
「謙也さんが来たから慌てて逃げましたわ」
「なんやと! このスピードスターの……」
「次ダブルス言いましたよね」
謙也の襟首を掴むと、財前はコートへと足を向けた。
「離さんか財前! 絞まる! 絞まっとるがな!」
なんとなく、ただなんとなく、あの二人連れの事は言ってはいけない、そんな気がした財前だが、心の中はかなり楽しげだった。
「すみません、乾先輩」
「うん? 何がだい?」
そのままコートで榊監督に会うはずだった。しかし成り行き任せで受付から呼び出して貰おうとしたが、なぜか音楽室に案内され、待っている間に七星は先ほどの事を乾に詫びた。
「ここ氷帝なのに、それを忘れてつい……」
見えない眼鏡の奥で乾の瞳が、申し訳なさそうに身を縮込ませる七星を優しげに映した。
「いや、構わないよ。彼の俊足は見事だからね」
七星が見惚れてしまうのは無理もない。
乾はそう思ったが口に出すことはなかった。
「待たせたね」
音楽室の扉を開けた榊は、乾と七星を見比べ少しいぶかしんだ。
明らかに学年と、見るからに雰囲気の違う二人組の取り合わせに戸惑いを感じたのだろう。
「私に何か預かりものがあると聞いたが」
椅子から立ち上がり会釈をする乾たちに向かいながら話しかけた。