東京物語*
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結局、最初は忍足の従兄弟対決と財前と日吉の二年生対決、そして白石と跡部の部長対決に決まった。
「見応えありますね」
「ああ、四天宝寺だってダテに全国に出ちゃいねえぜ」
鳳と宍戸も食い入るように行き交うボールを目で追う。
「おや、七星ちゃんじゃないか。どうしたんだい、今日は実行委員の会合はないはずだが」
けだるい昼下がりの青学の校舎から、一人の小柄な女子生徒が姿を現したのを乾は見逃さなかった。
「あ、乾先輩」
立ち止まった七星は、乾に挨拶をすると肩に掛けたスクールバッグから本を取り出した。
「図書室に読書感想文用の本を借りに来たんです」
「ほう、なかなか難読な物を借りるんだな」
七星から受け取った本のタイトルは『カラマーゾフの兄弟 中』とある。中とあるからには、上巻は読破したということだろう。
「面白いかい?」
「はい、ようやく面白くなりました」
はにかむようにほころぶ笑顔に、乾の表情も和らぐ。
「そう言えば、乾先輩は部活は?」
グラウンドからは野球部の掛け声や打球音、校舎からは吹奏楽部の練習音、そしてテニスコートからもボールの弾む音が聞こえる。
「ああ、俺は」
「おお、乾。まだ行っていなかったか。それなら丁度いい、これもついでに頼むよ」
乾の言葉を遮るように現れた、テニス部顧問竜崎スミレが手にした大きめの封筒を持ち上げた。
「合同練習の資料だから監督に渡しといておくれ」
竜崎は乾に封筒を渡すと、さっさとテニスコートへと足を向ける。
「お使い……ですか?」
「そんなものだね」
「どちらまでですか?」
ちょっとした好奇心なのだろう。七星は小首をかしげると、そう乾に聞いた。
「ああ、氷帝までね」
「あら、君たち氷帝へ行くの?」
突然嬉しげな声が乾と七星の後ろからかかった。