月光小夜曲*
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…もう一度聞くが、お前テニスは?」
跡部さんが、あたしをじっと見つめて聞いて来た。
「したことありません」
あたしはそのまま答えた。
「手を見せろ」
「え?あっ…」
ぐい…とあたしの両手を掴むと、跡部さんはあたしの手を自分の掌の上で広げて、観察し始めた。
「小せぇなぁ」
(よけいなお世話ですっ)
「でも…確かに、この手はラケットなんて握っていませんね」
あたしの手を覗き込んだ、鳳さんが言った。
「しかし、腑に落ちんな」
あたしの手を離したものの、跡部さんは納得出来ない…と言う顔であたしを見た。
「確かめさせて貰う。来い」
もう一度あたしの手を掴むと、さっさと歩き出した。
「跡部さん、そんな急ぐとあたし、転びます」
「転んだら、起こしてやる。安心しろ」
愉快そうに笑うけど、全然ゆっくり歩いてくれない。
(そーゆー問題じゃないんだってば跡部さん、ほんとにあたし転がるんです。大玉転がしくらいに転がるんですよ?いいんですか?)
「さあ、ここだ」
あたしが心で叫び、いっそわざと転んでやろうかと考えている間にテニス部部室についてしまった。
もちろん男子テニス部だ。
部室の一画が、お店の試着室のようにカーテンで仕切られている。
もう部活は始まっているらしく、部室には誰もいない。
「そこで着替えろ」
渡されたのは、氷帝テニス部の男子用ユニフォームだ。
あたしはため息をついた。
(仕方ない…跡部さんの気の済むようにしないと、帰れないみたいだし…)
あたしは半ば反抗するのもあきらめ、渋々と急ごしらえの割に立派な試着室でユニフォームに着替えた。