乾汁の効用~密やかな午後~
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《40―30》
(フッ、インサイトで叩き込んで…)
跡部がいつものように手を眼前に持っていくが、指先に当たるのは手塚の眼鏡だった。
(チッ、どうにも慣れねぇ。コンタクトにしちまえよ、手塚)
さっきから動くたびにわずかにずれる眼鏡が、うっとうしくてたまらないと跡部はイラつく。
(しかし、よく眼鏡で試合が出来るもんだ。感心するぜ)
インサイトが決められず腹も立つが、そこはキングを自負する自分だ。華麗なる美技はいくらでも繰り出せる。
(……ああ、しまった。眼鏡はなかったのだ)
反対に手塚は眼鏡をかけていなくても、無意識に直そうと指先が目のところへいってしまう。
「手塚もインサイト試してるのかな」
時折目に手をやる跡部な手塚に、不二もおかしそうに笑う。
「あれはちゃうで。眼鏡のずれを直そうとしてまうんよ」
同病相憐れむ、といった感じで忍足も手塚な跡部を見た。
こちらも長期戦になってきた。相手の身体に戸惑いつつも、コートで向かい合うのは自分の姿だ。
調子がいい、そう手塚は思った。試合の時には頭から払拭する左肘の痛み。それが今はまったくない。
身体も跡部だから、体力も充分だ。
やれる、どこまでも。痛みで引き戻される限界もない。
潰れるまでやってみたい…。
ふつふつと手塚から闘志がみなぎってくるのが、跡部にも伝わった。
(フッ、俺様もだぜ手塚。その身体を使って限界を越えて来いよ)
跡部が使う手塚の右腕がうなった。