乾汁の効用~密やかな午後~
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「俺様は右利きだ」
口の端を持ち上げると、不敵な笑いを跡部な手塚に向けた。
「どんなに俺様がてめぇの右腕を酷使しようが関係あるまい?」
「…確かに…そうだ」
手塚な跡部の言葉に何かが見えたのか、自分に言い聞かせるかのようにつぶやいた。
「同様に、てめぇが俺様の左腕をどう使ったとしても、影響はねぇってことだ」
手塚な跡部は跡部な手塚、自分の肩を軽く叩いた。
「さ、手塚。来いよ」
コートの定位置に戻ると、手塚な跡部に言った。
「……」
跡部な手塚は左手にラケットを握ると、ボールを真上に放り投げた。
(…左の跡部…)
忍足は初めて見る、左プレイの跡部に目を見張った。
(右の手塚…)
一方、不二達青学レギュラー陣も初めて見る右の手塚のプレイに、忍足に並んで目を見張る。
中身は反対とわかってはいる。だが、目の当たりに見るそれぞれのプレイに違和感を感じながらも、知らずに引き込まれていった。
《0―15》
《15―15》
片方が打ち込めば、片方も打ち返す。
お互いに、いつも使わない腕を利き腕としている。
そのせいか、パワーが今ひとつ乗らない感が否めない。
(チッ、身体の動きはいいが、思った威力が出てねぇ…のか?)
自分の体調ならわかるが、いかんせん他人の身体だ。本調子かどうかは掴めない。
(…少し重く感じるようだが、気のせいだろうか…)
手塚もまたボールを打ち込み、ボールを拾い、また返す。
「微妙な体格と体重差、それと利き腕の違いがそれぞれに違和感を与えているのかもな」
乾はノートを取りながら、二人の観察に余念がない。