乾汁の効用~密やかな午後~
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
だが、テニス部部長であり生徒会長でもある自分を考えると、たかが書類の手渡しくらいでわざわざ出向くのはプライドが許さない。
「チッ…」
一度イラつき始めると、練習も気がそぞろになる。
あの伊達眼鏡のせいだ、と頭の中で忍足を踏みつけながら部室に取って返すとバッグから携帯を取り出した。
「忍足か、てめぇ何してやがるさっさと帰って来い! 」
呼び出し音が途切れるや否や送話口へ怒鳴りつけた。しかし…
「あ、跡部か。よんどころない事情ですぐ戻れへんのや。ごめんな? もうちょい待っててや」
話し方は忍足だが、忍足とはまったく違う声が跡部の耳に届いた。
「……誰だ? てめぇ嫌になれなれしいじゃねぇか」
「いや、そやから事情があってやな…跡部」
「僕の声じゃ無理じゃない? 」
「そないなこと言うたかて…」
不二が困惑する忍足の手から携帯をすっとその手に取った。
「もしもし跡部? ちょっとした事情でね、もうしばらくこちらにいるから、もし用事があるなら直接来てくれないかな? 彼に帰られると僕としても困ってしまうんで、悪いけどそうして貰える? 」
「……忍足…? 」
知り合って以来、ただの一度も聞いたことのない忍足の標準語。開いた口がふさがらないとはこのことだ。
携帯を片手に文字通り、跡部がぽかんと口を開けたまま動きを止めた。