乾汁の効用~密やかな午後~
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チロリと不二が忍足を睨んだ。
「この眼鏡外させて貰うよ。やりにくい」
忍足の返事を待たずに、フレームに指を添えるとすっと眼鏡を外した。
「…かまへんけどな」
不二から眼鏡を受け取りつつ、裸眼の自分を見るのは奇妙な感じだった。
(伊達な割に定着してしもてるから、自分でも見慣れへんわ…)
「………」
不二と忍足のやり取りを目の当たりに見て、乾の言葉の真実を認めざるを得ないが手塚にすれば疑問が残る。
「入れ替わりはわかったが、試合をする理由は何だ」
乾汁で二人が入れ替わったという情報はコートに集まっていた部員にたちまち伝わり、この『実は自分対決』の異例な試合にざわつき始める中、手塚は不二と忍足に視線を向けたまま乾に聞いた。
「興味とデータだよ。こんな未曾有(みぞう)な経験、誰にも出来るものじゃない」
(…まぁ、そうっスよね。好き好んで乾汁飲むのは不二先輩くらいしかいないし…)
二人の話を聞くとはなしに聞きながら越前は思った。
「…お前のデータ蒐集癖はわかるが、試合の理由だ。なぜわざわざする必要がある? 」
「…手塚は思わないか? 」
「何をだ」
「ライバルは全国にも身近にもあまたいる。仮に全てのライバルを倒し、頂点に立ったとしよう。手にした栄光と裏腹に残るものは何だと思う? 」
「…………」
「孤独と虚しさだ」