乾汁の効用~密やかな午後~
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「…やっぱりな」
ため息をひとつつくと、忍足は眼鏡を押し上げようと目元まで手を持ち上げたが、いつものフレームがないことに気づいて苦笑いをわずかに浮かべると、空に置いた手で前髪をかき上げた。
「フフ…でも君だってそうでしょ?」
「そらな…ライバルは一人でも減らしたいわ」
逆に不二はうるさそうに忍足の眼鏡を外した。
「…伊達眼鏡ってほんとなんだね、視力いいじゃない。邪魔じゃないの?」
眼鏡のフレームを片手で持ち、軽く振りながら不二は、忍足の視力を確認するかのように辺りを見回した。
「別にええやろ?それより、俺達が戻ることやけど、もう一回あの乾汁を二人で続けて飲めばええんとちゃう?」
不二が指先で弄(もてあそ)ぶ自分の眼鏡をじっと見ながら忍足が言った。
「多分そうだろうけど、すぐに戻ったらつまらなくない?」
「……は?」
「他人になれるなんて、こんなチャンス滅多にないよ。ね、楽しいと思わない?」
忍足の顔をした不二が、ニコニコと覗いて来るが、自分に覗き込まれて楽しいはずがない。