乾汁の効用~密やかな午後~
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ほんの一瞬、張りついたような笑顔を見せると
「…何だ、バレちゃった?」
肩をすくめて不二が笑った。
「たまにね、何もかもが嫌になるんだ」
手すりに両ひじと背中を預け、薄い雲が長く延びる空を振り仰ぐと、つぶやくように不二が言った。
「ああ、それは俺もあるよ」
同じように不二の横に並ぶと仁王も空を見上げた。
夏の日差しはなかなか夕暮れを呼ばない。
しかし、風は日中よりわずかに涼しさを乗せ、二人の髪をさらさらと揺らす。
かすかに遠くひぐらしのカナカナ…と言う声も涼感を増してくれる。
「よし、各自座って手元のプリントを見てくれ」
不二先輩が部室を出て行ってしまったので、ようやくテニス部の人達も落ち着きを取り戻したみたい。
「じゃ、お先に失礼します」
遅ればせながらミーティングが始まり出したので、あわててあたしは頭を下げて部室から出ようとした。
「ああ、七星ちゃん。これ持って行ってくれ。きみ用の特別ブレンドなんだ」
乾が七星を呼び止めると、なぜか赤いリボンのついた500mlのペットボトルを七星の掌に乗せた。