月光小夜曲*
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その時、あたしの携帯が鳴った。急いでフェンスから少し離れると、携帯に出た。
「俺だ」
「…え…?え~と、俺と言うのは、どちら様?」
「俺様だ!」
「─跡部さん!?」
思いもかけない相手だったから、あたしは多分素っ頓狂な声を出したに違いない。
目の端で、菊丸先輩と乾先輩が同時にあたしを振り返ったのがわかった。
フェンスからさらに離れつつ、
「な…なぜまた跡部さんがあたしに電話を?」
小声で跡部さんに聞いた。
跡部さんから借りたロレックスの腕時計は、あの後跡部家の運転手さんがわざわざ取りに来てくれて、ちゃんと返したからもう用はないはずだ。
「お前…氷帝に転校する気はないか?」
「……はい?」
思わず足が止まる。今、転校って言いましたか?
「氷帝に転校しないか?と聞いたんだ」
一音、一音区切るように跡部さんはもう一度言った。
「あたしが氷帝に転校!?何でまた、そんな展開になるんですか!?」
その場に立ち止まったまま、つい声を大きくしてしまった。わけがわからない。
「お前は『帝王の星』を取った。その人物が氷帝にいないのはまずい。加えて、お前の人気だ。あの体育祭以来、お前に会わせろという生徒がテニス部を取り巻くんだぜ?。まったく…俺様の人気を食いやがる。しかもテニス部以外の生徒は、皆お前が氷帝の男子テニス部員だと信じきっているしな」
「ええっ…!!ちょ…ちょっと待って下さいよ。そしたらあたしは、氷帝に行ったら男子生徒なんですか?」
あの時のことを思い出すと、急に恥ずかしくなる。
「自分で言ったろ。氷帝の越前リョーマ」
からかうように跡部さんは笑う。
(そんな…てかその前に、あたし氷帝なんて行かないし)
「あのですね、跡部さん。あたし氷帝には行きませんから。百歩譲って転校しなきゃいけないとしても、氷帝は選びません」
はっきり言った。氷帝になんか行ったら…身動きが取れなくなる…。
「ほう…俺とチェスをするのは嫌か?」
「え…?いや、跡部さんとチェスは別に構わないですけど…?」
「ならいい。迎えをやるからすぐに来い」
「…は?」
(…跡部さんも人の話は聞こうよ)
次に跡部さんの声を聞く前に、不意にあたしの手から携帯が離れた。
「手塚だ。跡部、高寺に何の用だ?」
いつの間にかあたしの真後ろに手塚先輩が立っていて、あたしの携帯を手に取り跡部さんと話し始めた。
「手塚だと?ほほう。すぐ傍にいたわけか」