帝王の庭*
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「日吉もかけてくるぞ」
「……」
…それは効いた。さすがにあたしも、返事に詰まった。
黙ってあたしは、跡部さんの携帯を差し出した。
「降参か」
勝ち誇ったように笑うと、跡部さんは、携帯を取り替えた。
「違います。自分の足で帰ります。動けるまでここにいて、それから帰ります」
あたしは最良の方法を述べた。
(それが一番確実だわ)
「…ったく強情だな。そんなんじゃ、男が寄りつかねぇぞ」
「別にいいですよ。そんなことはどうでも─えっ?きゃっ!」
あたしは、いきなり跡部さんに抱き上げられ、焦りまくった。
「仕方ねぇな。送ってやるぜ。あと30分もありゃ俺様の仕事も終わるから、車の中で待ってろ」
そう言うと跡部さんは、あたしを抱えたまま軽やかに校舎の階段を下まで降り、主を待っている車の後部座席に押し込んだ。
「……」
─何だかんだ言っても、跡部さんは、いい人だ…。生徒会室に戻る跡部さんの背中を後部座席から見送りながら、あたしはそう思った。
まぁ『俺様』なのが何だけど…。
でもまぁ、これでもう氷帝に来ることもないし、ホッとひと安心。
あたしは車の中で、そう思い、ひとりでに笑顔がこみ上げた。
しかし…家に帰ってから、あたしは重大なミスをしたことに気がついて呆然としてしまった──。
あたしの左手首に─女子中学生にはあまりに分不相応な、ロレックスの腕時計が燦然(さんぜん)と輝いていた─
「もう一度氷帝に行かなきゃならないの…?そりゃあんまりな仕打ちじゃありませんか…」
あたしは、じっとロレックスの腕時計を見つめて言った。でも時計は何も言わない。ただ正確に秒針が動いて行くだけ。
あたしはしぼむかというくらい大きく息を吐いて、仕方なく自分の携帯を手に取って開いた。
見知らぬ番号からの着信が履歴に残っている。これが跡部さんの番号だ。
今度は軽くため息をつき、呼吸を整え、その番号にかけた。
「何だ」
「あたし…」
夜空は晴れている。星がチカチカと瞬き、月もくっきりと見えた─
fin.