水色の恋…白雪姫*
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「ねえ、こっちの花見てごらん、七星ちゃん」
「わあ、綺麗ですね、花弁が透き通るみたい」
またとある日の昼下がり、植物園の温室で不二と七星の姿が、濃い緑陰に見え隠れする。
そしてまたとある日。
「あ~、今日の映画はハズレやったな」
「そうですね、冗談かと思ったのに、冒頭で『犯人は私よ』って言ったのは本当だったんですね」
「まったくや。フランス映画は当たり外れがデカいわ」
映画後の意見交換が、喫茶店で行われている模様だ。
そして
「疲れているようだが大丈夫なのか?」
「大丈夫です。それより手塚先輩はいかがなさいますか? 釣りでも山登りでも行きますから、おっしゃってください」
青学の放課後の生徒会室。
山吹の文化祭が終わってからの一週間、七星はすべての放課後も土日もつぶして連日氷帝と青学テニス部レギュラーと出かけていた。
これも渚へのお礼のためだった。
その最後のお礼の相手が手塚国光だ。
本当を言えば、手塚も七星をどこかに案内しようと色々と考えてはいた。
だが、いざ自分の番が巡ってくると驚いた。
いつもの明るさを必死に保とうとしてはいるが、隠しきれない疲労が七星を覆っていたからだ。
昨日は菊丸や桃城、海堂といった元気があり余った連中が引っ張り回したに違いない。
自分はどうすべきかと思いを馳せ、七星が座る椅子を振り返った時だ。
「……!」
いつの間にか七星は椅子のすぐ横の壁にもたれかかるように、深い眠りに落ちていた。
手塚はとっさに上着を脱ぐと七星に静かに掛け、額にわずかに乱れる前髪を、そっと指先ですくい上げた。
この、二人だけのゆるやかな時間と空間が、他の誰にもない自分への贈り物なのだと手塚は思った。
七星の目が覚めるまで、手塚の時間も止まる。
fin.