帝王の庭*
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(どうしよう…)
これが、自分の携帯で氷帝の外にいるのなら…間違いなくあたしは家族に連絡を入れている。
でも実際は、まだ氷帝の中だし、あたしの手にあるのは『俺様』の携帯だ。
(…万事休す…)
あきらめてあたしは、跡部さんの携帯からあたしの携帯へコールした。
「何だ」
(…跡部さんて『もしもし』って言わないんだ)
「あたし」
ちょっと、遠慮して言う。
「…あたしと言う知り合いはいないが?」
そっけない。
「その携帯の持ち主のあたし」
「あーん?」
跡部さんが、携帯を確かめている様子がわかる。
「…お前、間違えたな?」
跡部さん、呆れている…。
「はい、ごめんなさい」
ここは、素直に言っておこう。
「─で、相談なんですけど、あたしを氷帝の外まで連れて行って頂けません?」
「氷帝の外?…お前、今どこにいるんだ?」
跡部さんが、椅子から立ち上がる音が聞こえた。
「…階段…」
あたしは、自分でも情けないな…という声を出した。
「階段だぁ?」
跡部さんが歩く気配がする。
扉が開く─
階段の途中に腰かけて、見上げるあたしと、階段の上から見下ろす跡部さんの目と目が合った。
同時に携帯を切った。
「─ったく、こんな近場でガス欠かよ」
跡部さんはくく…と笑う。
「仕方ないでしょう。4時間も動いたんだから」
本当は、ここと生徒会室の往復しかしてないけど、ちょっと大げさに言わないとね。
「次は俺様にお願いしろ、と言ったはずだぜ?」
階段の手すりに肘をかけると、跡部さんは口の端でニヤ…と笑って言った。
「それは、ゲーム中のリタイアの話でしょ?今はゲームも終わったし、対等なはずです」
あたしは、ちょっと口を尖らせて言った。
「対等だぁ? んなこたぁないぜ。お前はここから動けねぇんだから、俺様にお願いするしかねぇだろ?」
やっぱり笑って、態度も大きい。
「ふーん。じゃいいです。あたしは、この携帯で家族に連絡して迎えに来て貰います」
あたしは、そっぽを向いた。
「携帯が入れ替わったままで困らねぇのか?俺は幸村に、とんでもねぇ返信をするかもしれねぇぜ?」
さらにおかしそうに笑う。
「構いませんよ。跡部さんと幸村さんが勝手につき合えばいいだけですから」
あたしは、跡部さんと幸村さんが出会う姿を想像したら吹き出しそうになったけど、我慢した。
「…ふぅん。そうくるか。なら、俺の携帯は…」