帝王の庭*
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「じゃ、解説をして貰おうか?お嬢ちゃん」
跡部さんは、椅子に深く寄りかかり足を組むと、あたしに説明を求めた。
「はい」
あたしはうなずくと
「まず『KV618』は『ケッヘル618番』…あたしと…跡部さんが着メロに使っている『モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス』の番号です」
ひと息に言った。
「そうだな。あれは至高の名曲だ。では『46』は?」
跡部さんは、続けて次の質問を挙げた。
「アヴェ・ヴェルム・コルプスは、わずか46小節しかありません」
「よくやった」
跡部さんは軽く手を叩くと、ニヤ…と笑い あたしを褒めてくれた…?
そして、跡部さんも自分の携帯を、チェス盤の上に置きあたしのと並べると
「紛らわしいから、お前が着メロを変えろ」
と、俺様的に言うから
「変える必要なんてありません。跡部さんと一緒にいることは、もうありませんし、氷帝にも、もう来ませんから!」
ちょっと反抗的に言い返し、あたしは勢いよく、椅子から立ち上がった。
(……まず…)
ちょっと立ちくらみ…ぽい…やだな…じんわりと反動が来てる…?
(跡部さんに悟られないうちに、早く帰らなきゃ…)
あたしは、視界がボヤ…とする中、懸命に自分の携帯を掴んだ。
「じゃ跡部さん、今後は退屈だからって、あたしで遊ばないで下さいね」
「そいつは、お前次第だな」
ムカついたけど、笑う跡部さんを生徒会室に残し、あたしは急いで氷帝から出ようと階段に片足を乗せた。
不意に掴んだままの携帯が鳴る。
(誰だろ…あ、家にかけて迎えに来てもらわなきゃ…)
「もし…」
「あ、跡部?俺やけど…」
(…忍足さん?…え?)
「跡部?」
(…ひょっとして…さっき…取り間違えた…)
「もっし、も~し」
あたしは、あわてて忍足さんからの電話を切ると、まじまじと携帯を見た…。
ストラップが違う…。
また携帯が鳴った。多分忍足さんだ。
「今、跡部さん出られないんですよ。後でかけ直して下さいます?」
あたしは、思いきり可愛子ぶって、声を作り、忍足さんに答えた。
「…へ?…女の子…って跡部の彼女なん?」
驚いたように忍足さんはあたしに聞いた。
「違いますって!誰があんな俺様…!よっぽどの物好きじゃないと彼女なんて務まりませんてば」
あたしは思いっ切り否定した。
「…けど、したら誰なん?彼女やない子に、跡部がそう簡単に自分の携帯触らすとは思えへんけど?」
疑る忍足さんの声。
そりゃそうよね…。ここは携帯が入れ替わりましたって正直に言うべきかな…。
あ…でも、それ言うと全部説明しなきゃならないか…かえって面倒な気もする。
よし、どうせ忍足さんと跡部さんは同じテニス部で友達なんだから、あたしが少々脚色したことを言っても誤解はすぐ解けるでしょう。
「ん~実は人には言えない間柄なんですよ…ふふ」
後は、俺様に説明させればいいわ。あたしはちょっといたずらっぽく忍足さんに言った。
「…人に言えへん…て」
何だか息を飲んで驚いた感じの忍足さんの声が耳に伝わる。
「まぁ、ご想像にお任せしますね」
忍足さんの返事はもう聞かずにさっさと切り、携帯を取り替えなきゃと、立ち上がろうとしたが…立ち上がれなかった。