帝王の庭*
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…あたしは、確かにそのアルファベットと数字の組み合わせを見たことがある…。
KVは変わらず、数字だけが変化して……。
頭に引っ掛かるのに…目の前のチェスに考えを取られてしまう…。
時間がどんどん過ぎる。
あたしの焦りもピークに達した。
(どうしよう…別に負けたって、跡部さんは無理難題言うはず……あるか…。言うよね。この俺様生徒会長さんは…)
…時間は3時50分。
とうとう最後の10分になってしまった。
あたしは、考えがまとまらないまま生徒会室を出ようとした。どうしよう…決め手はないのにどちらかを選ばなきゃ…『音楽室』か『美術室』か。絶対どちらかにある。
はずれたって、命まで取られやしない。あの俺様の言うことをひとつ聞けばいいだけよ。
覚悟を決めよう…。
あたしはそう思い、唇を噛んで目をギュッとつむってから開くとドアノブを強く握り込み、最後の10分の戦いに出るためにドアを開けようとした。
─その時、跡部さんの携帯が鳴った…。
聴き慣れたメロディ…。
跡部さんは言ってた『着メロまであたしと同じで焦った』と…。
「わかった!」
あたしは、扉を勢いよく押し退けると、一気に廊下に踊り出た。
跡部さんが笑っていたのを、知らずにあたしは『音楽室』を目指した。
行きは早歩きで2分…帰りは10秒…。ダメだ全速力出すと家に帰れなくなる…。帰りを1分…。
もう次の手は考えてある。
差す時間は5秒で足りる…。
7分で携帯を探す!
あたしは、音楽室に飛び込んだ。
(KV618…!)
それは『ケッヘル618番』
あたしは、音楽室を急いで見回した。
そして…目的の作曲家の胸像を見つけると、焦りつつも、そっと胸像を持ち上げた。
…空洞になっている胸像の下から、あたしは自分の携帯をやっと見つけた…。
「ふう…」
思わず大きく息を吐いた。
(いけない。気を抜いちゃダメだ!)
あたしは急いで音楽室を出た。
「──!」
足が…思ったより動かなくなって来ている…。
4時間分の緊張のせいだろうか…。
あと5分─
あたしは焦る心と重い足を引きずり、必死に生徒会室を目指した。
あと1分─
生徒会室の扉を開けた。
チェス盤を目指す。
30秒─
『クィーンxh7+!』
読みきった手だ。
15秒─
『クィーンxビショップh6』
「チェックメイト!」
あたしは、自分の携帯をチェス盤に置いた。
…4時の鐘が鳴った。
「ふひ~」
今度こそ大きく息を吐くと、あたしは近くのイスに倒れ込んだ。
「くく…やったな。しかしあれはフェイクだぜ。5番目のヒントになっちまったからな。まったく運のいい奴だぜ、お前は」
跡部さんは愉快そのもの…って感じで笑った。
「運も実力のうち」
あたしは、ケロッとして言うと、首からカードを外し、跡部さんに返した。