何も言えなくて…人魚姫の恋
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「部長、俺の忘れ物に触らないでくれます? 」
チラッ…と手塚を振り返った越前の眼差しは、コートで敵を見下すあの瞳だった。
「何……! 」
手塚の目が見開かれた時、越前の口の端が持ち上がり、不敵に笑う小生意気さが全面に映った。
(…まずい…よね。手塚先輩とリョーマくん、険悪なムードになってる…)
その場のピリピリとした空気を感じ、元はと言えば自分が発端だから…と、七星は何かを決心したように唇を噛むと、ひとつ大きく息を吸い込んだ。
「離してくれる? リョーマくん。あたし、手塚先輩と帰る約束なの」
「…え…」
リョーマくんの手が緩んだ。
そのままあたしはリョーマくんの手から自分の手をするりと抜くと、手塚先輩へと振り返った。
「では先輩、帰りましょうか」
ひどくぎこちない笑顔を向けてしまったと思う。