帝王の庭*
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正午丁度、あたしは生徒会室から飛び出そうと、勢いよく扉を開けた。
「ちょっと待て。ヒントをやろう」
跡部さんは座っている机に肘をつき、片手の甲に顎を乗せ、ゆるやかに目で笑うと楽しむようにそう言った。
「ヒントは全部で三つ。1時間ごとにひとつずつ、教えてやろう。まず最初は『46』だ」
「…46?」
あたしは、ドアノブに手を添えたまま跡部さんを振り返り、かえってまごついてしまった。
(46…?小学校なら『4年6組』って考えるけど…3年までしかないし…)
「そら、2分経過だ。いいのか?」
ニヤつく跡部さんをしり目に、あたしは生徒会室を飛び出した。
「──!!」
…けど、生徒会室から出てすぐあたしは、足を止めてしまった。
ここは4階…。
校舎の最上階だ。もしあたしが勢いよく1階まで降りたら…おそらく戻っては来られない…。
跡部さんは、あたしの体力が続かないことは知っている…。ただそれが、走れる距離の限界が50メートルまで…と言うことは、知らない…。
(どうしよう……)
あたしは階段の途中に座り込むと考えてしまった。
いつの間にか8分が過ぎている。
あわてて、身を翻し生徒会室に駆け戻る。
「よう、来たな」
跡部さんは、チェス盤に近づいたあたしの首から下がるカードに、ひとつ目の印鑑を押した。
あたしは素早くチェス盤を見る。
跡部さんの駒は
『ナイトf3』にある。
あたしは瞬時に
『ナイトc6』に置くと、また、生徒会室を後にした。
再び階段に座って考える。
やみくもに走れない。
的を絞って、最低2~3教室にしないと、4時間も走れるわけがない。
ヒントは三つ…って言った。
最初が『46』…さっぱりわからない。
…ヒントが揃うのは午後2時…。
仕方ない。それまであたしは決して動かず、ここで考えよう。
あらゆる可能性の次の一手を─
7分50秒が過ぎた。
あたしは、少し急ぐ感じで扉を開けた。多少は息もはずませて…。
跡部さんは印鑑を押し、あたしは駒を動かす。
『ナイトc3』
『ポーンd6』
何度か階段と扉を往復した。
「二つ目のヒントは『618』だ」
跡部さんは、ゆっくりと言った。
(…数字ばっかり…)
最初の『46』だけなら、『46キロ』で保健室かな…とも思ったけど『618』でわからなくなった。
ヒントは後、ひとつ─
あたしは階段から立ち上がり、廊下から教室のクラス名の書かれた板を確認し始めた。