何も言えなくて…人魚姫の恋
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「…先輩、何でさっきはクッキー食べなかったんスか?」
グラウンド5周、不二と2周目まで無言で並走していた越前が、3周目に入ったところでチラリと横にいる不二に視線を投げてから口を開いた。
「…うん?ああ…あれね?」
不二も規則的な息遣いで走りながら、わずかに視線を越前に移した。
「ふふ…だってあれ七星ちゃんのじゃないもの」
「…え…?」
一瞬越前の目が、これでもかと大きく見開かれた。
(七星のじゃない…?)
「どうした、もう疲れたのか?最下位はペナル茶だぞ」
「…え…?」
不二とは違う声に、いつの間にか下を向いて走っていた自分に気づき顔を上げると、隣は不二から乾へと代わっていた。
(あれ…?)
慌ててさっきまで隣にいた明るい色の髪を目で探す。
(いた…!)
不二は先頭集団の前から2列目にいた。さっきまで自分もそこにいた場所だ。わずかの間に遅れを取ってしまった。
(くそ…っ!)
残り1周。唇を噛み、越前はスピードを上げた。
「あの…手塚先輩、一緒に帰ってもいいですか?」
おずおずと近づいて来た七星からの思わぬ誘いに、外したシャツのボタンを掛け直していた手塚の動きがピッタリと止まった。