何も言えなくて…人魚姫の恋
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「ねぇ英二、ちょっとだけ見せてくれる?」
不二が菊丸に近寄り、いつものように柔らかい微笑みで聞いた。
「…不二も欲しいの?」
クッキーを独り占めしていた菊丸に、桃城が河村にラケットを持たせ、バーニング戦法で分け前をせしめたところだったので、菊丸も残り少ないクッキーと不二を見比べ不安そうな視線を向けたのだ。
「違うよ、見るだけでいいんだ」
「……?」
確かに不二は辛党だから、目の前のクッキーに手をつけなくても不思議じゃない。が、これは七星の手作りだ。そうとなれば話は別で、例え不二でも欲しがるはずなのに…と菊丸も納得出来ずに怪訝(けげん)そうな顔をしながら、不二の前に開いた包みを見せた。
「ありがと英二、もういいよ」
軽く目を開きチラリと包みの中のわずかなクッキーを覗いた不二は、緩く手を上げて菊丸に言った。
「…いらないの?」
「うん、僕はいいから英二達で食べて」
不思議そうに不二を見る菊丸に、変わらない微笑みで不二が答えた。
不二先輩や手塚先輩に食べて貰えたら…そう言った友人達の希望は叶わず、家庭科で作ったクッキーは、不二と手塚以外の部員の胃袋へと消えた。