何も言えなくて…人魚姫の恋
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(…俺にくれた分で最後ではなかったのか…?)
図書室でポケットから割れてしまったクッキーのかけらを取り出し、焦って頬を染めていた七星…。
その姿を思い出し、手塚の表情はわずかに和らぎはしたものの、それはすぐに消え、また元の寂し気な表情へと戻ってしまった。
(…どうしよう…)
我にかえった七星も落ち着かない気分を抱えている。
いきなり菊丸がクッキーを持って行ってしまったから、言い出せなくなってしまった。
『お願い!これ男テニの先輩達に食べて貰って~!不二先輩や手塚先輩だったら凄く嬉しいんだけど、皆さんでって言えば絶対二人も食べてくれるよね?』
そう、あの包みはさっき教室に戻った時、クラスメイト達から渡された物だ。
「おいしーね!さ~すが七星ちゃん!」
菊丸はもう勝手に包みを開け、満面の笑みで頬張っている。
(そりゃ…作ったのあたしじゃありませんから…)
真実を告げずにいる自分に罪悪感を持ちながらも、今さら友達の作ったクッキーだとも言えないまま
(でも、あたしが作ってない分絶対安全だし美味しいはずよね…)
と心の中で押し問答のように葛藤を始めた。